第43話 カタカの事情

 ガシャーン!

 ザァスゥン…

 

 何かが、粉々に崩れる音がした。

 

 「ダメ、やったか…」


 「そのようですね、やはりクンバでは相性が悪かったのでしょう」


 崩れたのは、カタカで抜け殻となっていた、クンバの肉体だった。


 「せやな、ドメイルも、まだまだ捨てたもんじゃないな」

 

 「ふっ、石之助様が仰ると、また感慨深いですね」


 「そういうなよ。それはそうとな、アギ。そろそろや思うねんな、わしらで直々にドメイル乗り込もう思うてんねん。どやろ?」


 「ええ、私もそう思います。クンバが捕らえられた、という事は、大賢者の真の覚醒の始まりが近い。という事ですからね」


 「さすがはアギや、湯鏡ゆかがみの精度は知っての通り、99%の的中率や、その湯鏡がこのカタカが消滅する。そう伝えている、それは変えようがないからな」


 「さすれば、ドメイルに侵攻する以外に、手立ては無し。と、なりますね」


 「そやね、久しぶりに踏むドメイルの地。想像するだけで、ワクワクするわ」


 「ふふ、では、早速準備と行きましょう」


 「ああ、そうしよか。と、その前に…」


 石之助は、そう言うと、粉々になったクンバの肉体を水で溶き、耳たぶ程の固さにまで練り込むと、暫く放置。


 その間に、つけ汁の仕込みが始まる。

 出汁は朝採れたばかりのカタカ産の魚介と野菜を使い、数時間煮込んでおく。

 出汁が出来上がる頃、先程のクンバ粉の練物も頃合いになっていた、それを麺棒で延ばし、2、3mmの太さで切っていくと、クンバ麺が完成した。

 

 さすが石之助、仕込み中も抜かり無く、アギに薬味を集めて来るよう指示を出しておいた、用意周到である。


 今日は、ドメイル侵攻を決めた記念、という名目で土竜女と蛇頭少年も呼び付け、会食を催すと、クンバ麺を美味しく頂いたのである。


 気になる味についてだが、石之助に言わせれば、「うどんに地中海の風が吹いた」なのであった。

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る