第42話 クンバは何者?

 周波数は低め。

 波緩い、響きの中、クンバは発光している。


 「じいさん、どうなるんだ?クンバは大丈夫なのか?」


 「ほほ、デンジュさんはせっかちですな」

 

 「私も気になる、尖り頭くん」


 「ほほっ、お嬢様まで…ほれ、見てくだされ、始まりますぞ」


 ビジャーン

 ブジョーン


 ディミニッシュな和音が響くと、術式は円筒の輪を発生、天まで一筋に伸びて、一瞬で消えた。

 次いで朦朦もうもうとした砂浜に、大きな波風が吹き抜けると、先程までクンバが居た場所に、何やら見知らぬ物体が見えた。


 「おい、じいさん!なんか居るぞ!」


 「わぁ、ホントだ、かわいい〜」


 「ほほほ、これは、驚きましたな、私も予想外でした。しかし、あの姿が本来のクンバ殿なのですよ」


 皆が驚くのも無理はない。

 そこには、ぬいぐるみ?いや、ぬいぐるみの様な小さなクンバがブルブル震えていたのだ。


 「よしよし、こっちおいで。わたしがミュウカお姉ちゃんだよ」


 「ミュウカちゃん、ダメだよ、危ない、気を付けないと!」


 「デンジュさん、大丈夫です、このクンバ君の目を見てください。透き通ってます、この目に悪意はないですよ」


 小さくなったクンバは、ミュウカに抱っこされると、落ち着いた様で、震えは止まった。が、途端に鼻の下が伸びてイヤらしい目付きになった。

 それも、その筈、ミュウカの乳房にどっぷりとうずまって、そのじゅうを堪能しているのである。

 

 「おい、クンバ、お前!ミュウカちゃんの、おぱーいで楽しんでるだろ!!ミュウカちゃんダメだ、早く、離して。コイツは危険だ、すけべ極まりないぞ!」

 

 「もう、デンジュさん考えすぎです、妄想もほどほどにしてください。ねぇー、クンバ君はそんな子じゃないもんねー」


 クンバはつぶらな瞳で、首を縦に振る。これがまた、愛らしいのである。


 「クソ、ミュウカちゃんは完全に堕とされたか…なぁケイリ、あいつ何者なんだ?って…ケイリお前も堕ちとるんかい!」

 

 「ほほ、よーしよし、クンバ君はかわいいですなぁ、特に、この尖り頭が愛くるしいですねぇ」


 「ダメだ、ドメイルの人間に警戒心は皆無か…仕方ない、此処は俺が頑張って分からせるしかないな、おい!二人とも聞いてく…」


 ズッドーン!!!

 バシャーン!!!


 デンジュが言いかけると、その瞬間、上空から凄まじい勢いで、何かが降って来た!


 「うわっ、何だよ今度は、凄い勢いで落ちたけど大丈夫なのか…」

 

 デンジュの心配をよそに、ザッブーン!と海から上がって来たのは、見覚えのある少年の姿だった。


 「ヤンクルナイサー」


 沖縄弁であるが、紛れもない。ルタであった。


 「わー、ルタぁ、見てこれ、可愛いなーい??」


 「ぬほぉー!!カワイイ!!神々しいな、どうしたのコレ?」 


 「ほほっ、ルタ殿、これはですな…」


 わちゃつくドメイル人。

 デンジュは人種の違いか、性格の違いか、馴染めない、それでいいのか?迷ったが決めたのだ、「俺はカワイイと認めん」と。


 デンジュは斜に構えた訳ではない、慎重なのだ、そう言い聞かせたのである。

 

 「クソ、いつか、化けの皮を剥がしてやるぞ」


 そう言って、デンジュはクンバに疑いの眼差しを向けると、クンバはそれに気付いたらしく、ミュウカのおぱーいにうずもれながら、イヤらし〜い目つきでチラッと見返すのであった。


 「キーっ!あいつ、タダではおかん、ミュウカちゃんのおぱーいは、俺のおぱーいって事分からせてやる」


 ドメイルが、何やらふざけた流れになって来た頃。カタカでは、新たな動きが起こっていたのであった。

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