第37話 原因と理由。そして適応。

 「本題??」


 「ええ、今こうして私が此処に来たことの理由よ。デンジュさんの中に眠る潜在能力を、開花させることが目的なの」


 「潜在能力…」


 「本来は誰しもが持っているモノなのよ、でもドメイルの人間は長らく、その能力が発揮出来なくなってしまったの。それには理由があるのだけれど、デンジュさんは原因を作った張本人に会ったみたいだけどね。ふふっ」


 「会ってる?あぁ、もしかして石之助のことかな?」


 「そう、その通りよ。彼がその原因。彼はこのドメイルに、目に見えない程、微細な石の鎖を網の目の如く、張り巡らせているの」


 「はーい、お母さん!私ね、その鎖を破れるよー」


 「そうね、ミュウカは強いのね。よしよし良い子よ」


 「おいらは破れないけど、見えるようになったぞ!」


 「そうね、ルタはつい先日、潜在能力が開花したのよね」


 何やらどんどんと話が進む。

 鎖とは?潜在能力とは?

 石之助の思惑も、気になるところではある。


 「みんなには見えるんだ、その鎖が。なんで俺には見えないの?」


 「あら、心配しなくていいのよ、これから見えるようになるは。さっきも言ったように、私がデンジュさんの能力を引き出すのだから」


 「そうか。分かったよ、俺も早くみんなと同じ世界を見たいな、そこからが本当の始まりな気がする」


 「そうね、デンジュさんは、まだこのドメイルの本当の姿を知らない。では、始めるはよ、デンジュさん、コチラへ来て」


 云われるまま、デンジュはユルネの胸に抱かれる。

 その抱擁は、極楽の夢心地であった。

 デンジュはドメイルに来てから初めて、ストレスフリーを感じている、暫くこのままで居たい。

 デンジュにとっては激動の日々なのだ、そう考えるのも必然である。


 (わぁ、ユルネさんのおっぱい柔らかくて気持ちいいなぁ。さすがミュウカちゃんのお母さんだな)


 デンジュは少しだけ、よこしまな気分で、アセンションの事を忘れている。

 

 其れもそのはず、積み重なる問題に、余すことなく、デンジュの適応力が本領を発揮しているのだ。疲れて当然。


 其れでも、入れ違いに捨てられた、古い習慣が肥やしになり、循環する。

 デンジュの成長は絶えず、行われていたのだった。


 (もう、このまま埋まっていたいなぁ。多分ダメだろうな。でもギリギリまで知らんぷりで、とおそうっと)


 たまには、甘えてもいいよね?

 そう思う、デンジュであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る