第35話 失敗?逆光?

 まだまだ天井はピーカンを貫く。

 頑固な程いい天気だ。


 「ふぅ、ふぅ、はぁー」


 「ひぃ、ふぅ、みぃー」


 「ズボォ〜い、リ・アクジョン!!」


 パジィーン!!


 ミュウカ、ルタは立ち合いの上手い三役の力士の如く、体を正面からぶつけ合った。

 恐らくモザイク処理であろう光景が、ただの押し合いを、ふしだらな状況にみせる。


 「さぁ!デンジュさん、お盆のおつゆを飲み干してください!」


 「え、はい、わ、わかった」


 デンジュは戸惑い少し手間取っている。

 

 「デンジュ!早くしてくれ,おいらのアレが無事なうちに」


 「なんだよアレって!!うー、そんなこと、もうどうでもいい。えーい!どうにでもなれ!!」


 ゴクッ

 ゴクり


 お汁を一気に飲み干した。


 (ん、案外甘くて美味しいなぁ…)


 「デンジュさん、どうですか?何か変わりました?」


 「どうだデンジュ?力湧いてこないか?」


 「んー、いや、何も変わらないなぁ、ちょっと喉に潤いが出たくらいかな、ハハハ」


 「そんな…」


 「メリュカ、おいら達どこか間違えたのかな?」


 「そんなことはないはずよ、言い伝え通りに儀式は行ったは。でも変わらないことは事実、ああ、どうしたらいいの!」

 

 「あのぉ、メリュカちゃん、儀式終わったのかな?だったらさ、服とか着ないのかなぁ、ほら、寒くなって来たしさ、風邪でもひいたらまずいしさ、一旦休憩でも入れてさ。どう?」


 「…そうですね、デンジュさんの言う通り一旦落ち着いてみましょうか。ルタも疲れただろうし、休もう」


 「そうだな、おいらも流石に疲れた。でも、なんかスッキリしないな」


 「まあまあ、二人とも落ち込まないの。こんなこともあるよ、失敗はつきものでしょ!次は成功するよ!」


 そう言って、デンジュは二人を励ましていたが、内心(またアレ見るのキツいな)なのであった。


 そんな励ましを受けても、意気消沈としたままのミュウカは、うつむき加減で呟いた。


 「どうしたらいいの…お母さん」


 すると、その言葉に反応するかのように、デンジュの左手のリングが、ピカッと光ったのだ。


 「うわっ!!」


 「きゃあー」


 「ぶばっしゅ!」

 

 驚き大声で叫ぶ三人。

 場の空気は変わり神聖な気が充満している。

 リングから飛び出した光は眩しいようで、眩しくない、目を開けば其処には、ぼんやり優しい人影が見える。


 「久しぶりね、ミュウカ」


 そして、その人影は、ミュウカの名を読んだのだった。

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