第29話 クンバ現る
激闘の予感が漂えば緊張感が否が応でも湧いてくる、ケイリの様な戦いの手練れでもそれは変わらない。
とはいえ、一息つくべし、ビーチの近くの人気カフェ「砂浜」のオープンスペースで椅子に座り、ズズーっと激ウマココナッツジュースを飲んでいると、ブウォン、ブウォン、と空間の歪む音がケイリの内耳を揺らす。
「来たようですな…」
ビーチから200m程海上の沖合い、およそ直径10mの渦巻が空中に現れた。
赤黒い渦の向こう側から異形の怪物が姿を見せた、紛れもなくクンバだった。
クンバは宙に浮いたまま辺りを一周見回すと腕組みをして頷いた。
「着いたようだな、ココがドメイルか、思っていたより悪くない、いや、寧ろカタカよりも生命力が豊富のようだな」
ビーチからその様子を伺うケイリだったが、クンバの事で少しだけ気にかかることがあった、それというのはケイリがクレスタイン家の語り部だからこその気付き、なのである。
「ほほ、これはこれは、楽しくなりそうですなぁ、うまくいけば大収穫ですぞ」
ケイリは確証はないが自信があった、しかし、今は確信に至る証拠などなにも無い、であれば先ずは流れに身を任せるのみ、行く末などは気にする必要などないのだ。
「おっと、あそこでノビてるのは犬猫共か?全く情け無い、最近のカタカは腑抜けが多くなってイヤだねぇ」
愚痴りながら犬猫男子達のもとへ近付くクンバへ、バシューンっとココナッツが襲いかかった。
バッグォンっと片手でクンバはココナッツを
「不意打ちか…卑怯な真似しやがるなぁ」
クンバの細く尖った頭が少し紅く染まった、どうやら怒ると紅くなるらしい。
「ほほ、コレで終わったら苦労はせずにすんだのですが、そうは簡単に行きませんでしょうな」
ぱんぱんと手をはたくと、ケイリは自分はココに居るぞというように敢えてクンバからよく見える位置で手を振った。
クンバはココナッツの進行方向を辿ると、ケイリを見つけた、そして鼻でふんと笑ってから呟いた。
「あいつか、なかなかやれそうなやつだな」
今のところケイリの思惑通りに事は進んでいる、が、しかしそれは戦闘は避けられぬということでもあった。
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