第22話 芳香 ー クレスタイン家の裏話その3の6
ブゥオー
ボォウオー
ゴォグゥォー
アギの魔術の影響で亜歩山には凄まじき轟音が鳴り響き、反響し山彦となって渦巻いて山全体を揺らした。
音以外にも熱波もあってその熱によって離れた場所のメリュカの顔が赤くなったりした。
しからばその魔術の中心にいる石之助はとてつもない火力と熱風を受けているはずなのだが、炎の中うっすら見える石影はただじっとひたすらに攻撃を受け続けていた。
これにはアギも痺れを切らしたようで「いい加減に倒れなさい」そう言って、ふんっと意気込みさらに火力を増加させた、すると今まで不動であった石之助が動いた。
「我慢できんか、青いな」そう言うと、直後、ぼそっと唱えた。
「
一帯は煙や砂塵で
「
すると地面から矢の形をした石器が一本現れた。
その石製の矢は光を帯びると雷鳴を轟かせ、光速の一矢となりアギの腹部に突き刺ささると同時に、間断無くぐるっと右方向に高速回転をして上半身の約3割程を抉りとったのだ。
「うっ、ぐほぉえっ」アギは苦痛の咆哮を上げ空中から落下、深傷を負った肉体は片膝で立つのがやっとの状態である。
「無理せんと、もう
「ふふふ、確かにこれではどうも分が悪いですね、うーん、この世界にあなた程の強者が居ようとは想定外でした、ふふ、今回は私の負けです、素直に引き上げるとしましょう、嗚呼、しかし時間の制限が悔やまれますねぇ」
「よお喋りはるお方やね、早う帰りなはれ」
「ふふ、これはお厳しいことで、次はこうは行きませんよ、では然らば然らば、出でよ「
アギは空中に禍々しい渦巻きを呼び寄せるとその渦巻きに吸い込まれていったのだった。
「ひとまず終わったか…」石之助がぼそっと言った、渦巻きはアギを吸込んだ後すぐに収縮して消えて無くなった。
「石之助さーん!」
「おおメリュカちゃん、無事か?」
「無事か?じゃないですよ、石之助さんこそ大丈夫なんですか?」
「ああ、なんともないで、それよりアブニイさんのバーや、早う埋めてあげよう」
「そうですね、そのために石之助さん戦ったんですもん!カッコいいですー!」
「なんや、照れるな」
メリュカ達はバーを地面に埋め、ミドリノをかけた。
するとニョキニョキと輝く芽が出てメリュカ達にお辞儀をした。
そして一瞬にしてドメイルで一番大きな大樹になり薄いピンクの花を満開に咲かせるとドメイル中にその芳香が漂って生き物から植物から何から何まで全ての存在しえるものがぼーっと時を忘れてしまった。
ただその瞬間を感じるだけの徒然に我を忘れている、そんな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます