第19話 クレスタイン家の裏話その3の4
大きく育った多くの木々の木漏れ日を抜けて、洞窟に戻るとサンディを入り口で待機させ、アブニイのところへ向かった。
「ただいまー、戻りましたよー」
二人はアブニイが見当たらないので「おーい」と大声で呼んでみるが出てこない、ゴロゴロしていた石之助が置き手紙を見つけたので読んで見ると湖の底にいるから大きな石を湖に放り込んでくれと書いてある。
「エイっ」
メリュカは言われるがまま石を湖へ投げ込んだ、ばしゃぁーんと水飛沫が上がったあとブクブクと泡が上がってきた。
「おっ、これはアブニイさんやね、前と一緒や」
ドバァー
バシャァ
「おー、戻ったんだね、どうやら成功したみたいだな」
「はい、ミドリノのお陰で山は緑で一杯になりましたよ!」
「そうか、よかったよかった、でもひとつだけ足りないものがあるんだな、それを最後にメリュカにお願いしてもいいか?」
「もちろんです!わたしに出来ることなら喜んで、こう見えても体力には自信がありますから」
「ありがとう、助かる、今回も大したことないと思うんだな、おいらの
「バーを種子にって、アブニイさんはどうなるのですか?」
「おいらは山だからな、それは変わらずに存在し続けるんだな、但し、いま此処にある肉体は空になるからこの湖に沈めてほしいんだな」
「そんな...せっかく出会えたのに、わたし嫌です、なぜ大きな木が必要なのですか?」
「それ、簡単必要だから、ミドリノで一気に緑を大きくしてたくさん増やすと反動ですぐ枯れてしまうんだな、その反動を止めるためにおいらが
アブニイ曰く、木々が安定する為には少なくとも50年はかかるらしい、その期間アブニイ自らが父ような樹木になり木々達が枯れぬよう監視せなばならぬ。ということである。
「わかりました、それなら仕方ありませんね、悲しいけど、アブニイさんの依頼引き受けます!!!」
「うんうん、助かるんだな、じゃあ…準備に取り掛かるとするんだな」
少しだけ名残り惜しそうにそう言って、アブニイは地面に座し、瞑想を始めるとアブニイの体は輝き頭の天辺からさらに神々しく輝き煌く小さな球体が現れた。
「なんや!!えらい眩しいで!!」
「きっとこれが、アブニイさんのバーです」
「そうみたいやな、おっ、ちょっとメリュカちゃんそんな近づいて大丈夫なんか?」
石之助の心配をよそにメリュカは落ち着いてその球体を握りしめた、それは力強く優しくもあり生命力に満ちている、指と指の間から溢れる光はやがて収まり球体の内側からアブニイの気配が感じられた。
それを壊れぬよう無くさぬよう袋に入れ、二人は言われた通りアブニイの抜け殻を湖に沈めると目を瞑り手を合わせた。
「さぁ行きましょう」
暫くして波紋が消えると、静かに二人は洞窟を後にするのであった。
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