第17話 小さな嘘

 夜の山で石と馬は重なり戯れていた。

 ああ、ヒヒーン、うう、ヒヒーン、ああそこやもっと強く頼む、ガッガッ、ああ、気持ちええ、最高や、ヒヒーン...。

 異様な声にメリュカは目を覚ましたが見てはいけないものを見てしまう気がして背を向けたまま様子を伺っていると、声が止んだので、ホッとしてまた眠りに落ちた。


 そして朝が来た、昨夜の声は一体なんだったのだろうか、太陽が昇り晴れを伝えてくれてもメリュカはスッキリとはせず、なのであるが、隣ではスッキリとした石之助とサンディが仲良く戯れている。


 「んん、い、石之助さん、おはようございます、昨夜はありがとうございました、おかげで良く眠れました」


 「そうか、それならよかった、わしも久々ゆっくりできて調子がええねんな」


 差し障りない会話、爽やかな朝に影を落とすことは避けたいメリュカはその気遣いに大人になった気でいるが直後取り越し苦労に終わるのであった。


 「昨日な、わしなメリュカちゃんが寝たあとサンディにマッサージしてもらってん、えらい気持ちよくて、ああ、ああ言うてたんやけど起きへんかったか?」


 「え、ああ、全然気付きませんでした、ぐっすり寝てましたよー、わたしもマッサージして欲しいです」


 メリュカは何故か嘘をついてしまった、どうしてなのか結局理解は出来そうにない。

 この程度の嘘など大したことはないけれど、心に少しの染みができた気がして、いささか気分は曇り気味であったが、今日はアブニイの依頼があるからと、早々に支度を整えると、行きますよー、と大声を上げいざ出発したのである。

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