第16話 クレスタイン家の裏話その3の2

 ふぅーと吹き込む外からの風をかき分けるように進んで行く。

 

 てくてく

 ゴロゴロ

 

 近道を抜け洞窟の入り口まで戻るとサンディが嬉しそうにメリュカに駆け寄り頬擦りをして喜んだ。


 「うわ、もう夜になるな」


 「そうですね、今日は無理せずここで休んで明日にしましょう」


 「そうしよか、そうと決まれば一晩明かす準備や、暗くなる前に早うやらな」


 まずは快適に眠れる場所を作るため石之助は地面に穴を掘り始めた、ドリルの原理で高速に回転した石之助は地面に自分の体が半分程収まるくらいの穴を掘った。


 「どや、こんなもんやろ、これで寒くないで」


 石之助は掘った穴に収まると熱を発した、これを自熱というらしい、自熱は周囲6畳程度の地面を温めることができる、保温モードで12時間は持つのでメリュカ達が山の夜の寒さに震えることはない。


 「ほえぇ、あったか〜い、さすが石之助さん!」


 「まぁわしにかかればこんなもん朝飯前、いや今は夜飯前か、はははっ」


 「ヒヒーン!!ブルブルッ」


 「では、今度は夜ご飯ですね、アブニイさんから頂いたこの“山の素α“を使って食べてみましょう...」


 「そうやな、わしは別に石やから食べんでええんやけどな...」


 「ダメです、旅は道連れです!わたしも怖いんですから」


 「食べなあかんか、そやな、分かったわしも男や!食べたる!」


 この"山の素α"なる物はアブニイの身体を一部切り取り乾燥させ粉末にした万能スパイスなのであった。


 「じゃあ、これをこうして細く砕いて、残っていたフルーツにサッと振って、どうぞ石之助さん!」


 「おう、ありがとう、ってメリュカちゃん、わしからですか!」


 「ええ、やっぱりどうしても体の一部からできているので…、アブニイさんの事は信じているんですけど、何というか...」


 「気持ちはわかるよ、わしも同感や、しゃあないな、わしも男や先に食べたる、こっち渡して」


 パクッと一口食べてみると何とも甘くまた塩味や旨味も効いて一言で言うと、


 「美味い!」


 なのであった。


 「本当ですか!」


 「うん、えらい美味しい、早う食べてみて」


 「オイシイー!」


 「そやろ、フルーツに魚や肉の重みが加わった感じなんかなぁ」


 「確かに肉感は出てますね、でもそれってアブニイさんの体から出来てるから当たり前なのかも」


 メリュカはサンディの食べ物にも山の素を振ってあげるとヒヒーンとサンディも美味しそうに嘶いた。


 「そろそろ寝ようか?今日は疲れたやろ?」


 「はい、ちょっと疲れてるみたい、さすが石之助さん」


 月明かりの下、暖かい地面に寝そべりメリュカは眠りに着いたのだった。

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