第15話 クレスタイン家の裏話その3

 昼食のあとにはお茶でもと気の利くティ助君がお茶を用意してくれた。

 日常のほんのひとつまみ分の和みの時、皆ほぐれ呆けているが、意外にもデンジュから話しの続きを頼むと願い出た、語る者トリップする者見守る者準備が整い、いざクレスタイン家の裏話は再開されたのである。


 ゴボ

 ゴボゴボ

 ゴボ

 プスッ

 パッ

 ドバーン!


 「ぷはーっ、いい湯だなぁ!」


 きゃーっ!うわー!

 と、メリュカも石之助も来る来ると分かってはいたが突然の登場にお決まりのよう驚いた。


 「うわー、ビックリしたで!アブニイさん!戻って来た!よかったよかった、死んでしもうた思うて内心えらいハラハラしてたんですよ」


 「おー!すまない、何も言わなくて心配かけたんだな、ほら見ろおいらはこんなに元気になって戻ってきたぞ!」


 「元気でよかったです、私心配しました、気づいたらアブニイさんが見当たらないので、それにしても湖の中で何をしていたんですか?」


 「おう、メリュカ意識が戻ったんだね、おいらこの湖が変わるのずっと待ってた、メリュカのおかげでこの湖変わった、さぁこっちにおいで」


 「はい、けど、どこまで行けばいいんですか?」


 「もっとこっち、この中入る、服脱いだ方がいい」


 「えっ、湖に、服も脱ぐんですか!」


 「アブニイさん、それはいくらアブニイさんでもあかんよ、年頃の娘さんに急に脱げなんて…え、メリュカちゃんもう脱いでるやないか!」


 「これでいいですね!大丈夫かな、冷たくないかな」


 「大丈夫、これ温泉に変わった、おいらメリュカと一緒に入りたい」


 「ほんとだ!暖かい!しかも少しぬるっとしていて肌に纏わり付く感じが気持ちいいですー!」


 「ほんまや!暖かい!石の肌にも良さそうやで!」


 「うんうん、いい湯加減だろ、これがおいらの待っていたもの、チチグリン成分がたっぷり入った温泉なんだな」


 メリュカの乳と亜歩山の湖が混ざり合ってできた温泉、その効果は如何なるものなのか、石之助の石の肌は特に変わらぬ、メリュカの肌は元々が綺麗である、多少肌艶はよくなるが劇的に変わった様子はなかった。


 「チチグリン?なんですかそれは?」

メリュカは問いかける。


 「うん、チチグリンは成長を促す成分でおいらの湖でしか生成されないんだな」


 各々泳いだり、浮いたりして湯を楽しみながら会話は進む。


 「成長ってわたしがどんどん大人になるってことですか?」


 「いいや、人間とか石とかそういうものには影響はなくて、植物に限られるんだなぁ」


 「ならよかった、わしえらい大きくなっても動くの困るだけやしな」


 「おいら、二人に頼みたいことある、おいらの山、今何も無い、だからチチグリン使ってまた植物たくさん蘇らせたい」


 温泉の効果なのか前向きになったアブニイはメリュカ達に亜歩山復活計画を依頼した。

 依頼はごく単純でチチグリンを抽出した液体を使って亜歩山に緑を取り戻すだけ、簡単なお仕事だ。

 メリュカは依頼を受けるとアブニイから預かった特濃チチグリン水をこれまたアブニイからもらった腰袋に入れて準備を整えた。

 石之助は時間切れでライトが使えないのを気にしていたがアブニイが洞窟の入り口まで近道を作ってくれてどうにかなった。


 「よーし、準備もできたし、そろそろ行きますね!」

 

 「そうしましょう、ほな、アブニイさん行ってきます!」


 メリュカ達二人は洞窟を出て行くのであった。

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