第11話 クレスタイン家の裏話 その2の2

 足下にしゃがれた声が振動して一定の周期で揺れを生じる、この声の元、目的地はすぐそこまで迫っていた。


 「石之助さん、サンディ、気付いていると思いますが、そろそろですよ、きっとこの上の方に見える平坦な場所の辺りだと思います!」


 「はぁはぁ、やっとやね、目的地まで行くのも大事やけど体力あっての冒険やで、早よ休みたいわぁ」


 「石之助さん、もう少しですから、ね、頑張りましょう!」


 「はいよ、そんな笑顔で言われたらわし何度でも頑張れるわ、結局気持ちの問題や、行くでサンディあと一息やで」


 「ヒヒーン、ブルブルッ」


 石之助もなんとか持ち直し声の主の所まで残りも僅か数10mの場所まで辿り着いた。


 「メリュカちゃんそろそろやで」


 「はい、声で身体が震えますね...胸のボーッとした感覚も強くなっていますし」


 「ヒヒーン、ブルッ、ぶりっ」


 「おいおい、サンディこのタイミングで用を足すんかい、緊張感ない奴やで」


 「石之助さん責めないでください、わたしを背に歩いたのや慣れない山道でストレスになったりで、少しお腹の調子が良くなかったみたいなんです、サンディいいのよ、ここは外だから、気にしないで」


 「ヒヒーンヒ、ブルるる」


 「メリュカちゃんは優しいお人やね、ほんま女神に見えてきたわ」


 涙ぐむサンディの馬糞はそのままに声の主に近づいて行くメリュカ達、目の前に迫ったところで岩陰から様子を伺ってみるとテニスコート半面程度の平坦な地面とその奥の方に洞窟なのか大人が大きく手を広げたくらいの穴があいているのがわかった。

 どうやら声はその穴の中から聞こえてくるらしい。

 しゃがれた声が聞こえる周期も長くなりこの場所も安全なようなので久しぶりの平らな地面で休憩を取ることにした。

 食料は此処までの道程で集めた果物や果実や野草などがある、メリュカでもある程度食べられる物と食べられない物の判断はできたが石之助の手助けのお陰で多くの種類の食料が集まっていた。


 「塩とかあればええんやろけどな、今は仕方ないな、わしは食べんでも死にはせんけど、メリュカちゃんとサンディはそうはいかんからな」


 「今は贅沢はいえません、ある物でどうにか繋いでいくしかないです、でもお塩は欲しいですね、塩分が取れないと体調にも影響してしまうので」


 和気藹々と話し、一時の休息を楽しみ、むしゃむしゃと腹ごしらえ。

 そして、少し気が抜けてきた頃、やって来たのは本日一番のしゃがれ声でした。


ヴォー

ヴヴォー

ゔぉぼぶぉう


 「えーらい、叫び声と風やで!飛ばされんようにわしに掴まっとくんやで!!」


 「はい!」


 「ヒヒーン!」


 凄まじい風に飛ばされぬよう、石之助は地中に身体の一部を杭のようにした4本を対角に突き刺した、石之助はこの風を全く微動だにせず持ち堪えてみせた。


 「いやいや、危なかったで、急やったから流石のわしも少し焦ったわ、皆大丈夫か?」


 「スゴイ!スゴイ!石之助さんスゴイです!そんな能力があったなんて、絶対まだ他にも隠していますよね!?ねー、石之助さん!」


 「おっ、おっ、メリュカちゃんそんな揺らさんといて、何も隠しとらんし、その時にならんとただ使わんだけやで」


 「えー、絶対まだまだあるって感じですよねー、ふんっ、いいですよー、わかりました、その時が来るまで待っていますから!」


 「えらいごめんな、いつか機会が来れば見れるから待っといてな、な!」


 (...なんで機嫌悪くなってんのやろ...)


 「最後何か言いましたか!?」


 「いやいや、気引き締めて行こかー!、って言っただけよ(汗)」


 メリュカが興奮して捲し立て石之助に詰め寄る姿はミュウカがデンジュにデレっている姿によく似ていた。


 声も止み、お腹も膨れて落ち着いたので、いざ洞窟の中へ声の主を探しに行くのでありました。

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