第10話 クレスタイン家の裏話 その2の1
深まる夜に
「じゃあ、そろそろ続きを頼むよ、まだまだ先は長そうだけど、メリュカのことが気になって気になって」
「ふむ、そうですなぁぁ、メリュカ様の旅も始まったばかり、前途洋洋と行けば良いのですがな、どうなるものやら、はっはっはっ」
「ミュウカちゃんが居ないと気が抜けてるねぇ、全然やる気が違うし、まあ、話しだけは手を抜かないでくれたらそれでいいけど」
「ふぉふぉっ、ご安心くだされ、言われませんでも話しはきっちり致しますぞ、それでは再開と行きましょうか...」
ゴロ
パカ
ゴロパカ
パカゴロ
時は再び20000年ほど前
石之助は転がり、メリュカはサンディに跨り進む。
ドメイル城の東側、遥か遠くに見える山脈がある、その山脈をドレアレド山脈、その中で一際大きな山を亜歩山(アブサン)と云う、石之助が言うには亜歩山は昔、他の山仲間との飲み会で飲み過ぎて気を失い人で言うところの粗相、しかも大きい方の大噴火をしてしまった、そのせいでドメイル中は降灰と酸性雨の影響で暫くの間、死の星の様相を呈していた。
山仲間の連中などはいずれまた元に戻るので大して気にはしなかったが、原因を作った亜歩山は気落ちしていた、自分の噴火のせいで仲のよかった者達、植物や動物の多くが亡くなってしまったのでそれが許せなかったのだ、その事を後悔して好きだった酒を絶ち、もう二度と悲しまぬよう全ての植物が生える事を拒否して山肌だけの姿で聳え立つ事を選んだ、山の世界では全裸である、そのため亜歩山は風雨に浸食される度合いが激しく山肌は刺々しい姿へ変わり、今では何ものも寄せつけぬ孤高の山になったらしいのである。
そんな話しをしているといつの間にかドレアレド山脈の麓まで辿り着いていた。
「メリュカちゃん、ここ行きます?ここの人らやったらわしより長いこと生きとるので何か知ってるかもしれへんよ」
「はい、そうしましょう!わたしもここに何か手掛かりがある気がして、上手く言えないのですけど、胸の辺りでぼうっと何かが小さく燃えている感じがするんです」
「そうかぁ、そなら何かあるんやろなぁここに、端からええ兆しやな、ほな行こか」
ドレアレド山脈の辺りは今は夏季で登山しやすくメリュカ達でも其れ程苦労せずに山越えができたのだが、一山二山越えても手掛かりはなかった、目指してはいたがやはり導かれるように亜歩山の麓まで辿り着いたのだった。
「石之助さん、山の方たちとお話しするにはどうしたらいいのですか?」
「これは難しい質問がきたで、かくいうわしも山とは話せんしな、これはもうお手上げやね」
「そうですか...」
「そんな悲しい顔せえへんといてくれ、わし山とは話せんけど、石となら話せるんやで、ま、わしと同じタイプの石だけやけどな...ごめんな、力になれんくて」
「いえ、石之助さんありがとう、その気持ちが嬉しいわ、でも、わたしどうしても直接話しがしたいんです、そうしないとこの胸の辺りのボーッとした感じが消えないってわかるんです」
メリュカの必死な様子にどうにか力になってあげたいが、石之助はどうすることもできず、黙ってゴロゴロするしかなかった。
グォー
グォ
ボグォ
ドドドー
「ヒヒーンッ、ブルブルルッ!!!」
サンディは突然起きた大地の波の様な揺れに驚き嘶き、直後地中を押し上げたり地上から押し戻したりする様な縦揺れが起こったのである、揺れはおおよそ2分でおさまった。
「なんやなんや!えらい揺れたで!メリュカちゃん大丈夫か?」
「はい!サンディも大丈夫そうでひとまずは皆無事な様で安心しましたー、それにしても今の揺れは何だったんでしょう?この辺りしか揺れていなかったような...誰かが震えているような…」
メリュカは人の心を汲み取る能力に長けていた、心の中が透けて見える訳ではなく読心術の様なもので長く精神世界に身をおいて生きてきたことがそうさせるのかも知れない、この力は多くの場合的中する、九割程度は合っているだろう、今回の誰かの震えという感覚も例に漏れず的中するのであった。
「ヒヒー、ヒヒーン、ブルッブル」
「メリュカちゃん、サンディが何か感じとるらしいで、こっち着いてきて言うてるよ!」
「はい、行きましょう、そこにきっと答えがあります!」
「そういうことや!ほな行くで!!」
「ヒヒヒーン!!」
メリュカ達は感じるままにゴロゴロパカパカ進み行く、進めば進むほど強く「ヴォー...」と聞こえるしゃがれ声、まだまだ先の発生源、想像ばかりが広がって怖くもあるし楽しくもある、手掛かりひとつ見当たらぬ、後には引けぬ旅故に前進するしか道は無し、なのでゴロパカゴロパカゴロパカと声のする方へ進んで行くのでした。
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