第6話 ツイノキ
ドォゴーン!!!
初めて聞く凄まじく大きな音、空気は震えそれに合わせ体も振動しているのが分かる。
ミュウカは鳥人間みたいなのと接近戦で戦っている、俺はただそれを見ている、茫然と宙に浮いて震えている。
情け無いとかじゃなく信じられない現実が目の前にあって今までの思考を書き換えるのにどうやら時間がかかっているんだろう。
時間にしたら10分もない、ミュウカは鳥人間みたいなのを近くの山肌に追い詰めて最後の一撃を喰らわす、そんな場面に見えた。
「デンジュさーん!そろそろツイノキなのでこっちに来てくださ〜い!」
「ツイノキ?なにそれ〜?、怖いから行きたくないんだけど〜!」
離れた所から全てが済んでくれる安全な状況を選択し、ぬるま湯の中で寝転んで、いつまでもふわふわとした感覚で暮らすことが素晴らしいのは、今起こりえているこの状況に於いて、ミュウカの
それだったら今の俺には合ってないと思う、だから俺はここにこうしているつもりは毛頭ない、特別なことではないごく自然的な感覚で判断し、選択した結果なら後悔という概念も当てはまらない、詰まるところ俺は自分を変えたいということなんだ。
「もう!デンジュさんわがまま言わない!!こっちに来てください!」
「はいはい、行きますよー、ていうかその鳥人間はもう襲ってこないの?大丈夫?」
「ええ大丈夫ですよ、だいぶ反省しているみたいです、こうなるともう暴れたりはしないです、ただこの世界で生きていく事は出来ないのでツイノキをしてあげるんです」
「ふむふむ、たしかにさっきまでの殺気と凶暴性は感じられないし、どことなくスッキリして目も澄んでるなぁ、いやーここまで間近で見てみると改めて化け物感がすごいね!ミュウカちゃんよく宥めたねこいつのこと!尊敬尊敬感謝感謝!」
「デンジュさん、いいですか、遊びじゃないんです、ツイノキは時間も大事なんです、なるべく早くしてあげないといけないんです、そうしないと、、、」
「そうしないと?」
「いえ、なんでもありません、それではツイノキを始めますよ!」
ツイノキが出来なかった時の答えは聞けなかったが、この後起こった奇跡ですぐにどうでもよくなった。
ミュウカは両手を胸の前で重ね合わせる、すると、とてもこの世のものとは思えぬ柔らかな空間が其処に出来上がった。
写真や映像には映らないであろう様々な色や気が混りあい調和した一色の光が辺りを包みこみ、全ての存在が肯定された幸福感に満たされいる。
その不思議な空間の中で鳥人間は至極満面の微笑みを浮かべた様に見えた。
「成る旅に抗うことのなきように、お救い賜ふれ祖なるお方よ」
ミュウカが唱えると此処よりも遙か上空、天空からスポットライトのように鳥人間を照らす一筋の光が現れた、すると、その一瞬で鳥人間の姿は消えていった。
「ミュウカちゃん、どうなってるの?」
「ふぅ、これはですね私のツイノキによって、彼はですね、旅に出たんですよー!」
ミュウカはドヤ顔えっへんとしたポーズで満たされた表情だ、輝いている。
「え、旅って何処によ??それにさっきまでのこの辺りの空気っていうか状況っていうかさ!なんなんよ!すごいよミュウカちゃん!」j
「ふふふっ、そうでしょう、ツイノキを始めて見れば、そうなる気持ちはわかります、ですがこれは一部、この世界の一端のただの一瞬にしかすぎません、私達もこのツイノキについて未だに解明できていません。分かっているのは人間以外の邪悪な者が居て、その邪悪なる者を浄化とでも言うのか成仏とでも言いうのか、そういった別次元に転送する術としてツイノキがあるという事しか分かっていないのです」
一転、ミュウカは先程とは違って神妙な顔つきで厳かな雰囲気、真剣であることが伝わってくる。
「そうなんだね、、確かに説明出来る様なことでもなさそうだし」
「ええ、すみません、答えになっていなくて、でも、このツイノキは母から教えてもらった大切な贈り物なんです、わたしはこのツイノキを行うことで母との繋がりを感じられるし大好きなんです、でもこれを行うとちょっと疲れるのと、、、」
「えええええーーーーー、うぉーーーーーっ!!」
ミュウカが最後言い淀んだところで、デンジュ達は地上へ急降下、力の抜けたミュウカがデンジュに抱きついてしまったのである。
「デンジュさんごめんなさい、これが終わるとどうしてもこうなるんです、、でも今日はデンジュさんがいるのでいつもより心強くて何かあれば助けてくれるって安心感もあって暖かい気持ちでもいっぱいになってます」
「そうなの?俺は今すご〜い怖いし、泣きたいし色々と縮み上がってますけど、、、」
とは言うものの、抱きしめられたデンジュはミュウカの少し高くなっている体温や汗ばんだ肌や服に触れたりおとこを意識したおんなから溢れ出るなんとも言えない甘い匂いにやられてこんな状況でもボーッとしてしまった。
「デンジュさんキスしていいですか?」
「ああ、そうしよう」
突然だけど驚きもせず、断る素振りもなく、空から落ちるその瞬間の中、二人は口づけを交わしたのである。
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