第5話 出動

 「あっ、うーん、よく寝たーっ」


 久しぶりに快眠というものを味わった気がする、充実した時間を過ごすとよく寝れる。


 「おはよう、デンジュさん、朝ごはんできてますのでよかったら一緒に食べましょう!」


 「うん、食べる食べる!」


 デンジュは素直にありがたい思った、いつもは食べるも食べないも考えずに大して気にしていない事であるのでこうして誰かと朝からご飯を食べるのは何十年振りだろうか、忘れてしまうくらいの時間が経っていた。


 「これ、お口に合うかわかりませんがどうぞ、ダメなら無理しないでくださいね!」


 目の前に出てきたのは紫色の固形物が2つ豆腐半丁分くらいと玉子焼きみたいな物とトマトみたいな丸い物が乗ったプレート、お碗に野菜らしい物が入った汁物であった。


 「あ、ありがとう、いただきますぅ」


 これはあかんやつや、多分食べたら速攻気分が悪くなる気がする。

 しかしせっかく作ってくれたわけで…

 えーい、いったれ俺!!


パク

パクリ

ガリ

コリ

ムシャムシャ

ムシャ

ゴク

ウム


 「美味しい!!」


 「よかった!デンジュさんのお口に合わないと思いました!」


 「うん正直見た目がね、ちょっとやばそうだと思ったけど、美味しいよ!ミュウカちゃんが作ったの?」


 「はい、そうなんです」


 そう得意げに言うとミュウカは「これで作りました」と電子レンジみたいな機械の所に行ってみせた。


 「それなに??、電子レンジみたいだけど」


 「これはですね、こちらの世界ではスタンダードな調理器具で、名前は、『お任せキッチンスグデキル君Jr』です。えっへん!これとても便利なんです、自分が絵に描いたとおりに料理作ってくれるんですよ」


 「スゴイ!時短もできる、しかも美味しい、でも材料はどうなってるの?」


 「ふふふ、さすがデンジュさんですね、それはなんと、この小さなサプリの粒と水、そしてあらゆる動物、植物、魚類、野菜などから作ったパウダーをミックスしたメーカー純正の粉をセット、最後は絵を読み込ませてスタートして待つだけ、この製品は世界を変えたのですよ!!!」


 「おお、あぁ、すごいね、、、」


 「ふふ、驚きましたね、この技術力に、そうですこちらの世界は科学が進んでいるのです!デンジュさん分かっていただけましたか?」


 「うん、わかった。」


 (昨日のケイリの手料理はこれじゃないよな、後で聞いてみよう、それとミュウカちゃんキャラ変わったなぁ、でもそうだよな、付き合い浅いし、変わったんじゃなくて元々のキャラなんだろうな、一回寝ただけで全部知った気になるのはあかんな。反省。)


 「そういえばミュウカちゃん、ケイリは?見当たらないけど。」


 「えーと、あー、ご、ごめんなさい、少し落ち着きますね、えー、ケイリはですね、あるところに行っています」


ヴゥーン

ヴゥーン

ブュン

ヴゥーン


 その時部屋に絶対に気付く音量でサイレンのような音が鳴り響いた。


 「噂をすればケイリから連絡ですよ、モニターを見てください!」


 壁一面の大きなモニターにケイリが映し出された。


 「お嬢様、少し厄介な事が起こりまして、1匹ですが、すばしっこいのが街へ向かって移動しております、わたくしはまだここから離れられそうにございませんので、申し訳ないですが対処していただけますかな?」


 「わかった、今すぐに向かうね、ケイリも無理はしないでね!」


 「ありがとうございます、お嬢様も無理はなさらずにお願いします、あー、あとそこのデンジュさんとやら、くれぐれもお嬢様の足を引っ張るようなことはしないでください、まぁ何もできないでしょうがなぁ、はっはっは」


 「おいおい、じいさんよ、あんた俺のことどんだけ嫌いなんだよ、俺はあんたの事結構好きなのによ、大好きなお嬢様が俺と二人きりで居るのが気に入らないって感じだよな?大人気ないねぇ、それぐらいで機嫌損ねる奴は小物中の小物だねぇ、いやだいやだ」


 「ケイリもデンジュさんも落ち着いてください、喧嘩している時間はありませんよ!」


 ミュウカはモニター越しに睨み合う二人をなだめるように優しい声で叱った。


 「お嬢様、失礼致しました、それではわたくしは仕事に戻ります、それではお気をつけて」


ガチャ

ザーッ

プツ


 通信はパッと途絶えた、同時にミュウカは手馴れた様子でシャワールームのような一室に入り一瞬でアイドルのステージ衣装くらいかわいい服に着替えた、その姿に見惚れてしまう程ミュウカは美しく輝いている。


 「さぁデンジュさんもここに来て、この中で目を瞑ってください」


 呆然としながら言われるがままにしていた、気付けば自分も全身着替えて黒いマントの魔法使い風の出で立ちになっていた。


 「さすがデンジュさん、黒が基調なんてスゴイです!レアです!やっぱりデンジュさんは私の運命の人なのです♡」


 「えっ、よくわからないけど、なんかすごい体験してるなぁ、でこれからどうする?」


 「ふふ、はい、では私に付いて来てください、こちらです。」


 ミュウカはリビングのカエルの置物(135cm位)の口の中に手を入れて一言唱えた。


 「クレマイオ」


ゴォー

ヴォー

ブゥオー


 転瞬、景色は一面の青、空の中を飛んでいたがデンジュは不安は全く感じなかった、それが当たり前でずっとそうしてきたように自然な感じがしている、感じではなく多分そうなんだと感じる余裕すらある、そんな自分を受け入れた。


 「ミュウカちゃん、これ結構スピード早いしかなり高い所みたいだけど、どこ?」


 「ここは、チレットス地方の上空で、この辺りにケイリが言っていたすばしっこいのが居るはずなのですが、それはそうとデンジュさん初めての上空での会話ですがお上手です、テレパスのスキルをお持ちとはさすがですぅ♡」


 (言われてみれば、口元開かず話してるな、でも考えてる事全部伝わってるわけではないし、いつもの会話と同じ感覚なんだな、よぉ分からんが使いこなせる事に感謝しておこう)


 「でさ、ミュウカちゃん、そいつはどんな奴なの?悪い奴で敵ってのは何となくわかるんだけど」


 「そうですね、なんて言ったらいいか、見てもらうのが一番早いと思いますよ!

デンジュさん後ろ見てくださいっ♡」


 「えっ、、、おーーーーーーーー!!!なんだコイツぁ」


 いやーな予感で振り返るが、予感的中だった。身長3m、鳥型モフモフ系で目クリクリのかわいいルックスだが四肢は屈強で頑丈そうで、その上に長くて鋭い爪も持ち合わせている。


 「ミュウカちゃん、やばいよこれなんかフウフウ言ってるし独特の芳ばしい匂いしてるし」


 「あっ、デンジュさん気を抜かないでください、危ないですよ。」


シュッ

ザクッ


 「うん、あ、あー!あああー!斬られた、爪で、ええーやばい死ぬぅぅ、死んじゃううう、、、」


 「デンジュさん、どーどー、落ち着いてください、デンジュさんの魔導服はそれぐらいで破られたりしませんから安心してください、デンジュさんはまだ駆け出し魔法使いレベルなので、今回は私があの子の相手をします、私の後ろに回ってみていてください。」


 「はぁい!お願いしまぁす!」


 「よし良い子です、それでは行きますよ!」


 ここからデンジュ達の戦いが始まった。

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