第3話 越えた時空、転送完了

 「キャー」


 「ごめんなさーい、すぐ出まーす!!」


 突然女風呂に転送された、しかも全裸である、公衆猥褻罪、逮捕からのネットでの晒され、人生終了を考えた。


 パシャ

 カッシャン

 ウィーン

 カシャー

 ドゴォ


 「おいバカヤロー、何やってんだ!!!」

 風呂場には聴き慣れない機械音と鳴り響く怒号。


 「君困るんだよ!まだ出番じゃないんだから、本番まで入って来たらダメだろ!!」


 「あっ、はい、すみません、、」

 

 「それとね、全裸じゃなくていいから、そこはリアリティ求めてないから、女優さん困っちゃうから!」

 

 「あ、はい、申し訳ないです」

 

 「君聞き分けいいねー、はいはい、じゃあ乱入シーンはまだまだ先だから戻って戻って!」

  

 「あざすー、失礼します」


 うん、助かった!

 映画の撮影現場だったみたいだ、とりあえず人生まだ大丈夫。


 しかし、どうしたものか、戻るにも此処がどこかわからんので動くに動けない。

 とりあえず、椅子にかかったガウンを羽織ってスタジオ内をウロウロとしていると、キャメラマンの向こうか見覚えのある女性が近づいて来た。


 「やっと見つけました、待っていましたよ!」

 

「あ!君は、えーっと」


 「ミュウカです。あの時は時間も無いし急展開過ぎて自己紹介も出来ませんでしたからね」


 一瞬、赤らむ顔に少し見惚れてしまった。


 「うん、ミュウカちゃんね、遅ればせながらですが、よろしくね。そういば俺もまだ自己紹介していなかったね、えーと俺の名前は、、、、えーっと、ん、あっ、んーーー、なんだっけ?」

 

 「あなたの名前は『ヒノノべ デンジュ』そう聞いています」


 「ヒノノベ デンジュ、ヒノノべ デンジュ、俺はヒノノべ デンジュ、、だっけか?」


 名前も忘れるほどの環境の急変、特に驚きもせず、デンジュは天命が如く瞬時に一変した状況に適応したのだ。

 その適応力は万人のそれとは比べものにはならない程に優れたものだった、正に神通力である。


 「ミュウカちゃん、ここに居てもしょうがないし、服も着たいし、一旦家に帰りたいんだけどいいかな?」


 「デンジュ様、それは叶いません、ここは今までと同じようで全く違う世界、わたしたちの存在はには存在せず、これから始まるのです」


 「んーそうかぁ、それなら仕方ないか、でもどうしようミュウカちゃん、おれ服もないし、何もないよ?」


 「大丈夫、安心してください、私達の所有する秘密基地があります、ひとまずそこに行きましょう!」


 撮影用の衣装を拝借し、外へ出ると、そこは夏祭りの参道であった。

 二人は橙色の空の下、虚像の賑わいを駆け抜けた。

 

 「はー、はー、ミュウカちゃんまだ?」


 「あと少しです、そろそろですから、頑張ってください!」


 「さっきから、そればっかりだよー、タクシーで行こうよぉ」


 「ダメです!秘密基地なんですから、誰にも教えられないんです」


 「はぁ、はぁ、しかし運動不足には堪えるな」


 どれくらい走っただろう、人影と夕闇が混じり合う時、デンジュの頭の中に何処からともなく歌が聴こえてきた。


 "ここはそことてこちらの世界

 あちらの内にうつつはない

 ほうけゞて間に間の世には

 ついぞ思はん旅始まれり"


 「ん、ミュウカちゃん、何か聴こえない?」

 

 「はい?何も聴こえませんよ」


 「そう…なんだ」


ガッ

バサッ


 「なんですかもー!急に抱きつかないでくださいー!そろそろ着きますからぁ、もう我慢してくださいね」

  

 「ごめん、ちょっと、存在の確認」


 「なんですかそれ?意味不明ですよ、まったく」


 (旅ねぇ...面白そうだ…)

 デンジュはその歌をボンヤリと受け入れた。


 「ほらほら、デンジュさん着きましたよ!」

 

 「え、どこ???」


 「ほらここ、街灯の下ですよ」


シュッ

ヴィィッ

ヴヴヴゥン


 地面から響く波を感じる。


 「え、なに、地面揺れてない?」


 「はい、この下に基地があるんです、では行きますよ!」


 「あー、身体が消えるーーー!!」

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