第1話 姉の失踪

 姉が消えた。

 家出をしたとかではない。その文字通り消えてしまった。両親が亡くなってから親代わりのように私を育ててくれた姉がいなくなってしまったのだ。


 それは突然、高校1年生になった頃だった。その日もいつも通りに『いってきます』『いってらっしゃい』をお互いに交わし、姉の透子とうこは仕事へ、私は学校に向かった。それから透子は家に帰ってきていない。


 警察に届けを出してからもう3日が経つ。あれから目撃情報も何も出てこない。最後に透子の姿があった場所は、以前通っていた美術教室だった場所。今はもう閉校していて廃墟となっていた。


 消えた翌日から、透子の事が気になって授業も頭に入ってこない。それどころではないのだから仕方ないじゃない。昼休みになり、ふとクラスメイトの会話が耳に入ってきた。


「ねえ、絵取り主様の噂知ってる?」


「聞いたことはあるけど…。なんか特殊な絵に取り込まれちゃうってやつだよね。でもあれって都市伝説でしょ。そんなことあるわけないない。」


「それがね、最近、行方不明者の人たちって絵取り主様に連れてかれちゃったんじゃないかってネットで噂になってるんだって。」


「ふーん。」



 絵取り主様…。ないとは思いつつも透子の失踪に関係があるのではないかと不安になる。なんでもいい、とにかく透子の行方に結び付くものが欲しかった。

 今日、放課後にでもあの美術教室にでも行ってみよう。

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