第4話 侵入
深夜。
俺は、サイハ(偽物)が泊っているホテルの裏口で、綾香が来るのを待っていた。
暫くすると綾香がミニバンでやってきた。
「鳴神さん、これ」
俺は、綾香からバッグを受け取り、ミニバンのボンネットの上で開く。
中には、転身庁の上層部が許可した、軍隊用のスーツや、アームガード、ブーツが入っている。これは、この世界で軍事演習を行いたい生命体が、寄付者でも能力が100%発揮できるように開発されたスーツだ。多分、俺の身体にはルルガ(精神)が入っているため、将軍としての能力が発揮できるかもしれないと推測したのだろう。
また、綾香は、俺に一組のトンファーのようなものも渡した。
「これは、ルルガさんが普段使っている武器の一つらしいわ。これも使えるんじゃない?」
『おお! この世界にも”シカラス”に似た武器があるのじゃな……これはたぎるわ!』
綾香の言葉に反応し、ルルガは嬉しそうであった。
「この防具と武器にはメデェアムをコーティングしたわ。これで、ルルガさんの戦闘能力だけではなく、サイハさんの精神干渉・感応能力も向上するのではないかしら?」
『フン! ルルガだけじゃ、役不足ってことね!』
『なんだと?! 女ぁ!!!』
俺の頭の中では、サイハ(精神)とルルガ(精神)が言い争っている。
俺は、その会話をよそに、防具と武器を装着した。
――身体が金色の稲妻のような光を帯び始める。
『おお、ワシの雷電体(らいでんたい)が使えるようじゃの。人間の10倍の身体能力が使えるぞ……短時間だけだがな。ちなみに泥仕合になったときは“伝来”(でんらい)と叫ぶがよい』
ルルガ(精神)は自慢そうに言った。
『ちなみに、ワタクシの能力もお忘れなく、相手の感情をかき乱しつつ、相手の動きが読めることもあるわ』
サイハ(精神)も負けじと自慢する。
俺は軽くジャンプして雷電体の動きを確認し、自分に当たらないようシカラスの使い方をルルガから簡単に教わった。一応、寄付者として、オレハある程度の武力訓練も求められている。シカラスの使い方は2時間程度の練習で何とか思った通りの動きをすることができた。
俺は、準備ができたので綾香に声をかける。
「よし、綾香はここで俺の動きをモニターしてくれ! じゃあ、サイハ! ルルガ! 頼むぞ!」
『承知!』
『任せて!』
――ダンッ。
俺は、金色の光を身体に纏うと、ホテルの35階のスイートルーム目掛けて向かってジャンプした。
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