第2話 異変


「何?! これ?!」


 俺は、綾香の言葉で目を覚ました。

 機械は異常音を発し、彼女は忙しそうにモニターや機器のチェックをしている。

 俺は起き上がり、あたりを見回す。


「綾香、何が起きた?」


 綾香が振り返る。


「……え? 鳴神さん?」


 彼女は何が起きているか分からない様子だった。

 俺は自分の体を見る……それは……鳴神 来人の体のままだった。


『おい! 何がどうなっている?!』

『え? 誰?! 何この身体?』


 急に、俺の頭の中に2つの声が響く。


『何で、ワシの身体が横たわっている』


一つの声は、荒々しい男性の声で叫んだ。


『ちょっとワタクシの身体はどこ?』


もう一つの声は、気の強そうな女性の声だった。


***


 あれから3時間だろうか? 転送室には多くの関係者が訪れている。彼らは、機器を計測し、俺の身体に起きた原因を話し合っていた。

 俺は、関係者から事情を聴かれ、身体を調べられたあと、少し運動していた。どうやら鳴神 来人の身体は俺の意思で動くらしい。

 頭の中の2つの声も落ち着きを取り戻したようだ、俺の頭の中で会話をしている。


『……なぁ、ワシがお前さんの体を借りる予定だったが、どうして意識が混在している?……そして、女、お前は誰だ?』

『なっ?! 失礼ではありませんこと? ワタクシ、第14次元 “ヨヤ”の第1巫女“サイハ”ですわ』

『あぁ……交易会議で発言する翼の生えた女だったか』

『なんですって?!』


 会話は俺抜きで進められている。

 俺は交易会議のことは、ニュースで知っていた。“ヨヤ”の生命体は天使のような種族が暮す次元。その第1巫女はラプチェの感情を読み取り、ラプチェの波動をコントロールして気候を操ることができるらしい。第1巫女“サイハ”は、その赤髪、緑目、白い肌の美しさから、この世界で特集番組が放送されていた。


「……サイハは、誰か人間の体を借りる予定だったのか?」


 俺はサイハに聞いてみる。


『……そんなことするわけないわ。 私の種族はこの世界の環境に適合しているもの……それに言葉は相手の心に直接伝えるわ……私の体はホテルの客室にあるはずよ』


 どうやらサイハは、寄付者になる必要はないらしい。ではなぜ、サイハの精神が俺の身体の中にあるのだろう……。そして、なぜ俺の精神はルルガの身体に寄り付かないのだろう。

 関係者と話し終わったのだろうか……綾香が俺のところにやってきた。

 

「……綾香、何が起きてるんだ?」

「正直、原因は分からない、こんなこと500年間起きなかった……。でも、どうやら3つの精神が混在しているみたいね、」

「1人はルルガで、もう1人はサイハらしい」

「え? あの第1巫女の?!」


 綾香が驚いた声を出す……そして俺たちも驚く意外なことを綾香が言った。


「……でも、さっき第1巫女はニュースで放送されていたわよ。生中継で」

「「「は?!」」」

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