そして、一週間後

 約束の一週間が経った。

 黎智はいつも通りに生活をしつつも、結智の情報が得られたかどうかが気になって何をしてても上の空だった。

 アンロックに行くこともできず、この一週間やきもきした時間を過ごしていたが、やっと今日玄理から結果を聞くことができる。

 少しでもいい。結智のことが知りたい。

 そんな一縷の望みをかけて、一つ息を吐いた黎智はアンロックのドアを開けた。

「あら、いらっしゃい。こっちにどうぞ、黎ちゃん」

「……こんばんは」

 入店した黎智にすぐさま声を掛けてきた純二は、黎智をカウンター席に促した。

 黎智が来店した理由を知っている純二は、そわそわしている黎智に「何にする?」と訊ねたが、「いえ、今日は……」と言って黎智はお酒を断った。

「そう……。じゃあ、ソフドリ用意するわね」

「あ、ありがとうございます」

「玄ちゃんはもう少ししたら来ると思うわ。あまり残業がない仕事みたいだから、来るとしたらいつも同じ時間帯になのよね」

 その言葉から、玄理が何の仕事をしているのか純二も知らないようだった。

「そう、なんですか」

 どこか腑に落ちない様子の黎智に、純二は「このアンロックではね……」とにこやかに話し始めた。

「無理強いしない・詮索しないが根本にあるの。その他にも諸々ルールはあるんだけど、そういう規則を遵守した上で出会いを提供している場だから、その筋には優良店として名が通ってるのよ」

「……そうなんですか」

「これまでにトラブルが起きたこともないしね」

「……」

 そこまで聞いて、やっと黎智は純二が自分を気遣っていることに気付いた。

 結智のことで真剣に悩んでいる黎智の心を軽くしてくれた純二に、黎智は微かに笑み「ありがとうございます」と小さく礼を言った。

「……え、やだ、何? 黎ちゃん、可愛いんだけど」

 前のめりでキラキラと目を潤ませつつ純二が黎智に詰め寄った時、「それは同意なのかな?」と呆れた声が掛けられた。

「私がお持ち帰りしちゃいけないってルールはないでしょ」

 黎智の後ろから現れた玄理に、ぶすっと頬を膨らませ純二が異を唱える。

「同意なら俺も口出しはしないよ。純ちゃんの人の好さは分かってるからね。初心者にはお勧めだ」

「……嬉しいけど、なんか引っ掛かるわね、その言い方」

 複雑な表情になる純二に苦笑した玄理は、黎智の隣に腰を下ろした。

「久し振り」

「……お久し振りです」

 どこか緊張している黎智を見て、玄理は微かな溜息を吐いた。そして純二に視線を向けると「部屋借りたいんだけど」と真剣な面持ちで訊ねた。

「バックヤードの控室なら今は誰もいないけど、どうする?」

 店内には個室がないので、込み入った話をするにはスタッフ以外立ち入り禁止のバックヤードに行くしかない。事情を知っている純二はすぐにバックヤードに行く許可を出した。

 「じゃあ、ちょっとの間借りるね」と玄理が腰を上げると、純二が「どうぞ」とカウンターの仕切りを上げる。

「ありがとう。おいで、黎智」

「あ、はい」

 玄理に促される形で黎智も後に続いた。

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