ラジオアクティブ・ウィズ・ヤクザ

神奈川県警 組織犯罪対策部 佐川宗辰殿


拝啓


逃走中の身にて、手紙がいつ頃お手元に届くか分からず、季節柄の挨拶が出来ぬことをお許しください。この度はかかる捜査の無礼をお詫びするため筆をとりました。


先日の取り調べの折、刑事さんには数々の無礼を働き、誠に申し訳ありませんでした。言い逃れの余地はなく、また、するつもりも毛頭ありません。此度の狼藉は全て黒須一家としてではなく、この私、山谷庄次郎個人が身の程も弁えず企てた沙汰であり、佐川さん、そして神奈川県警の皆々様方には多大なるご迷惑をおかけし、償っても償いきれません。


刑事さんには既にお察しのことと思いますが、私は先刻、放射性物質及び核燃料密輸出密輸入の罪で捕まろうという下心で、貴方様の取り調べを黙秘しておりました。隠れ家から見つかったウラン、ラジウム、プルトニウムなどの物騒なシロモノ、また放射線計測機器などの違法な物品はすべて、この私、山谷庄次郎が独断で「海外に高値で売り捌くつもりで違法に所持していたもの」と、世間様にはさせていただきたいのです。


世の人は私達のことを「ヤクザもの」と一括りにしますが、私のような半端者から見れば、黒須一家はヤクザものではなく博徒の集まりであり、私自身にも己はヤクザではなく博奕打ちであるという自負があります。天下国家の法を破っているという意味では同じ穴のムジナなのかもしれませんが、ムジナはムジナで己はタヌキとはまるで違うのだと、不相応にも思っておるのです。


弱小ヤクザの世迷い言だと思っていただいて結構、本来マトにもかけられぬ分際であることは承知しております。しかしながら、曲がりなりにも黒須一家の旗揚げは慶応2年、初代である黒須義吉が小田原藩末盛で立ち上げた賭場を前身とする老舗任侠団体であります。以降二百余年に渡り、黒須は横浜での博打一切を取り仕切り、打つ打つ打つ、それのみで口に糊してきた生粋の博徒集団です。


特に、元より口入れを表看板とする博徒の寄合であった黒須では、寺銭の身入りは下、ヨソの賭場で勝ち取った銭こそ上とされております。黒須が賭場を開くのは、黒須に負けた者どもに、上がり目の機会を与えるべきだというフエアネスだと親父も常々言っておりました。夜盗崩れとは似て非なる。これは初代から続く黒須の美学であり、これこそが任侠道であると皆が教わった子供らです。


古くは徳川による賽子の摘発から始まり、明治政府による花札の禁止、太平洋戦争での手本引きによる投獄まで。あらゆる時代、あらゆる場所で狼藉を働いてまいりました。警察のご厄介になる身には違いありません。ただ一つ、日陰者の身で言わせていただくならば、黒須の罪は後にも先にも一つだけ。刑法第186条「賭博場開帳図利罪」以外は、二百年の歴史に唯一つとしてございません。


組対の刑事さんならご承知のこととは思いますが、どれほど日の丸親方が目の敵にして私達を「無法者」と呼ぼうとも、私達はあくまで天下国家の定めた法なるものを守る義理がないとしているだけであり、私達「無法者」にも義理を通す法はあります。それこそが広く任侠道と言われるもので、そして私達黒須一家にとっては、鉄火場の法です。博打の目を天皇陛下とする盆の法です。


浅学のため、天下国家の定めた法が核燃料の横流しをどれほどの罪としているのかは分かりません。ですが、どう転んだところでこの国の法では最高に重い罪は死罪でしょう。しかし鉄火場の法には死罪より重い罪があり、これは「不殺」という罪です。一度出た目に唾吐いた者は、賭場に二度とは戻れない。運用上の出禁ではなく、一度座敷を汚した者は死後も座敷に上がれないのです。


中でもゴトがバレた者の末路と言えば、それはもう筆舌に尽くし難い。伊豆の黒須一家の本家には、庭に大きな石蔵があります。そこには何百枚もの額が積み重ねられており、その一枚一枚に○○の某太郎だの、○○の某次郎だのと言った名前が彫られている。古いものでは200年前のものさえあります。黒須の門を叩いた者は誰でも、一度はこの蔵の整理を親父から申しつけられます。


これは一つ一つが、黒須一家の賭場でイカサマを働いた者の名前、正確に言えばゴトがバレた者の名前が彫られておる札です。イカサマの手口一つ一つにそれを行った者の名前が付けられており、二度と同じ手を繰り返させないよう、関東一円の博徒全員が未来永劫その愚かさを蔑み、ゴトを行った者の名を呼び続けるために拵えらる。鉄火場の法の罪人を、末代に渡って辱めるためです。


札に傷をつけるガンは黒須では「灘の佐吉」と呼び、昭和になった今でもガンを働いた者が出ると「佐吉が出たわ」と蔑まれます。賽の目の盗み見は「太田の茂平」と呼び、賭場で怪しいそぶりを見せようものなら「助平の茂平が出たでたぞ、性懲りも無くまた出たぞ」と唄が歌われる。組の者の子の中には、これを子守唄にすらしている者もおります。乳飲み子にすら、馬鹿にされねばならない。


両名ともに、既に百年以上前に死んだ者です。賭場を追い出され後は、泥に塗れて野垂れ死んだ。一族郎党皆散り散りになりました。それでもなお、罰は終わらない。私はもう、こうして書いているだけで、手の震えが止められんのです。百年後、二百年後の泰平の世に、「山谷庄次郎」という名が莫迦者の言い換えになっていると想像するだけで、恐ろしくて賽を握る手すら痺れる。


刑事さんにとっては、これほど都合の良いお願いも無いだろうとは分かっております。それを承知の上で、どうかこの半端者を「博徒」として死なせてやってはもらえませんでしょうか。15の冬に任侠の世界に入り、いつか親父と同じように賭博場開帳図利罪で引っ張られる日を夢見て参りました。しかしそれが叶わぬ今、核燃料の密輸入で捕まろうとするこのエセ博徒を、どうか黙って見過ごしていただくワケにはいきませんか。


マトをかけられている身の私が、マトをかけている当人である刑事さんにこのようなお願いをすることは、奇妙な話なのかもしれません。しかし、これまた奇妙な話なのですが、私はむしろ嬉しかったのです。刑事さんに、疑っていただいたことが。他の刑事さんたちが皆んなしてやれ弱小ヤクザだ、やれ核燃料を売り捌いただと疑う中、刑事さんだけは私を博徒として疑ってくだすった。


逮捕以降、文屋どもが私をどう呼んでいるかは知っております。「ヤクザがアカに核燃料を横流しして、天下国家を転覆させようとする危険がある」だの、「食品に放射性物質が混入させられ、脅迫に使われる危険性がある」だの、どれも私のようなチンケな小悪党がしでかすにはあまりに荒唐無稽と思いますが、素性も知れぬヤクザが放射性物質を隠し持っていたとあれば、無差別にバラまかれるのではと心配になるのが人の性でしょう。


しかし刑事さんだけは、黒須の山谷という男は、ビジネスなどという横文字に絆される賢しらな男ではないと。黒須の山谷ほどの男が、勝負事を差し置いて国家政治だのなんだのにうつつを抜かすはずがないと。あれだけのお人に反対されながら、黒須の山谷が放射線源を持っていたというのなら、これはもう放射線でゴトを企んだ以外に違いないと、私のことを疑って下すった。


盃を返した今、私はもう親無しのカタギです。黒須の歴史に密輸のクロをつけない為には、親の顔に泥を塗ってでも組を出るより他にありませんでした。ケジメの一つも満足につけられず、博徒どころか半端者とも言えない身やもとさえ思っております。そうした中で唯一刑事さんだけが、未だに、私を一端の博徒として扱ってくれる。これに勝る喜びが、他にどうありますでしょうか?


刑事さんを博奕打ちとお見受けした上での、博徒崩れからのお願いです。この勝負、既に刑事さんの勝ちで決着はついております。ご慧眼、お見事。ご推察通り、ウラニウムも、ラジウムも、プルトニウムも、全てはゴトの為に私がかき集めたものです。言い逃れのしようもありません。ですから、後生のお願いです。どうか一つ、「負け方」だけは私に選ばせてはもらえませんか。


無論、タダでとは申しません。刑事さんの推理もゴトの中身までは正しく言い当てられていない。このまま取り調べを続けても、私をゴトでしょっぴくことは出来んでしょう。負けた者の責任として、私はこのゴトの手口を包み隠さずお話しします。勝った者の責任として、ゴトの真相は刑事さんの心中に留めておいてもらいたい。本来いずれは「山谷庄次郎」と呼ばれていたであろう手業です。


取り調べ中、刑事さんはゴトの手口をX線を使ったものだと想像されていたようですが、残念ながら違います。近頃の賭場は雑居ビルが多くなりましたし、確かに黒須の関係者がビルの一室を倉庫として借り上げている賭場もございます。おそらくその部屋から階下の賭場に向かってレントゲンをパシャリ、助平心で手を透視しとるんだろうとお考えになったんでしょうが、生憎X線というものはそう都合良くはありません。


X線が透視できるのは、台を通して骨を撮影するからです。何故そう言えるかと言えば、これも刑事さんのお察しどおり、一度失敗して諦めておるからです。まずもってキチンと台に備えられていない札や賽子はフラフラ動き撮影が難しい。万一得物が動かないとしても、レントゲン写真は物体の影を転写する仕組みですので、賭場の床下に前もって増感紙やフイルムを仕込んでおく必要がある。


賭場の上にも下にも仕込みが出来るんなら、それはもうX線なぞに頼らず、カメラでも仕掛けた方がヨホド無難でしょう。なによりあれでは、肝心要の札の絵柄が透けてしまって映らんのです。学のある刑事さんのこと、流石の推理とは思いましたが、企んでいるのが学のない私なのですから、そのようなインテリがやる高度なゴトをやっていたに違いないとお疑いになるのは買い被りというものです。


私が行っておったのは、モットモット単純なイカサマです。放射線の目に見えないという性質は、以前からイカサマに使えるのではと考えておりました。しかし私の頭では、どうやっても安全にそれを使うというところまでは頭が回らなかった。なので、ウラン、ラジウム、プルトニウムなど、こうしたシロモノを機械でもって加工することは諦め、そのまま使うことにしたのです。


左手甲から背中にかけて、私の身体には皮膚に管が埋め込んであります。左肩の肩甲骨のてっぺんには猪の札の墨が入っており、そいつの目が外の機械に繋げられるジヤツクになっている。GM計数管という、放射線を計る機械へのジヤツクです。放射線を感じると、指先から背中にビリ、ビリと僅かに電気が流れる。私は手の痺れでもって、放射線量の高い低いが判別出来るのです。


当初はメーターを見ねば正確な数値は分かりませんでしたが、今では「これはトリウムだな」「これはウランだな」と分かるようになりました。昔よくありましたウランやラジウムの夜光塗料ナドでも、手をかざせばある程度は分かります。この機械でもって、放射性物質を塗ったり振りかけたりしたガン付きの札の放射線量を計り、絵を盗み見る寸法です。放射能汚染によるマアキング。私はこれを「アトミックゴト」と呼んでおります。


札を放射能で汚染することは少し骨が折れましたが、通常のガンに比べると遥かに容易でした。なにせ放射線は無色無臭なので、傷や臭いには目敏い胴もチットやソットでは気付かない。花札や賽子のような己の手で得物を触れるような博奕であれば、直接手でもって懐からラジウムを塗ってしまうこともありましたが、まさか素手で放射性物質を塗り付けてるとは胴も思いませんでしょうから。


もう少し警戒心の強い賭場であれば、盆守や三下、時には札師に直接放射性物質を振りかけることもありました。菓子やハンケチに忍び込ませたりもしましたが、一番手っ取り早いのは賭場の厠の蛇口に塗るものです。胴が小便などしてくれれば、己の手でちょちょっと札を汚染して、その後の札がなんなのかは線量の強弱で計れるようになります。これでもっておそらく七千万ホドは勝ちました。


尤も、最近はそのような手間はせず、花札や木札を作る職人のところから、原料となる木や紙に直接ラジウムを混ぜ込んでばかりおりましたが。市販品の花札やトランプとなって世に出回る頃には放射線量も大きく下がっておりますが、若干量ながらムラがあるため絵札ごとに線量も違う。手の痺れが鈍くピリピリ来ると、古い木の一番良い部分から切り出した名品だと誇らしくすら感じたものです。


以下は、私がこれまで関東一円でイカサマを働くため、放射性物質を仕掛けた賭場を仕切る組及び貸元、また職人達です。帳面を付けていなかった為かなり歯抜けになっておりますが、無い頭を捻って思いつく限り書き出しました。証拠と言ってはなんですが、この話を信じていただくために用意しました。お気が向くようならご確認下さい。


神奈川県 小葉組 中野秀夫

神奈川県 小葉組 朴詠三

神奈川県 岡野春日会 永澤幹英

神奈川県 相田連合 三宅八幡

神奈川県 相田連合 三宅みその

神奈川県 相田連合 村岡茂樹

神奈川県 煉獄会 木村響

神奈川県 煉獄会 榊原恵

神奈川県 煉獄会 本田大治郎

神奈川県 煉獄会 河野慶福

神奈川県 煉獄会 金芝春

神奈川県 与野悟(玩具類卸)

神奈川県 三田村英子(玩具類卸)

神奈川県 吾妻一平(玩具製造)

神奈川県 吾妻トメ(玩具製造)

神奈川県 吾妻太陽(玩具製造)

神奈川県 松田美春(玩具製造)

神奈川県 沼津陽介(玩具製造)

神奈川県 沼津陽治(玩具製造)

神奈川県 ロバート・フィリップス

神奈川県 ウィル・モリス

神奈川県 衆議院議員 中川俊晴

神奈川県 議員秘書 針生慎太郎

静岡県 大成十時産業 大成義仁

静岡県 大成十時産業 小野田瑞穂

静岡県 那古野会 桐生千亜紀

静岡県 那古野会 島津充

静岡県 那古野会 奥田郷地

静岡県 阿波野琴菊会 阿波野喜久雄

静岡県 阿波野琴菊会 新田富江

東京都 三連座 王姚明

東京都 三連座 張強

東京都 三連座 李蘭信

東京都 龍神同盟 山谷幸之助

東京都 龍神同盟 昼神京

東京都 龍神同盟 栃木雅俊

東京都 龍神同盟 朴浩司

東京都 龍神同盟 朴大寛

東京都 龍神同盟 大窪ひろみち

東京都 大牧勲(紙卸)

東京都 水戸開道(紙卸)

東京都 連帯 山口那智王

東京都 連帯 新城はじめ

東京都 連帯 古谷一郎

東京都 星人会 浅間弥五郎

東京都 星人会 車平吉

東京都 野州組 野澤忠孝

東京都 野州組 マルコス・レノ・モレノ

東京都 野州組 道場児太郎

東京都 川端アキ世(コンパニオン)


現在、私は稚内におります。身に刺さるような寒さはありますが、美しい町です。この後、海を渡って樺太に行き、ソビエトに亡命する手筈になっております。もちろんケジメもつけず逃げるワケではありません。その後「亡命出来なかった」として稚内の警察に出頭しお縄に着きます。これからまたもう一度お世話になる刑事さんに、これ以上の不義理を重ねるつもりはありません。


私がそのような真似をするのは、偏に己にかかる放射性物質及び核燃料密輸出密輸入の罪を補強せんがための工作です。ソ連と繋がっていたとなれば、私は黒須一家から正式に絶縁されます。国内他極道組織も、此度の沙汰は全て「博奕で首が回らなくなった三文極道が博打の元手欲しさにソ連と繋がって親の顔に泥を塗った」と考えるでしょう。それが私に出来る最後の親孝行になります。


一度で良いから、賭博の罪で捕まってみたかった。親父、私は貴方が羨ましい。私も貴方のように、刑事に「博打の目は親方日の丸にも変えられんので」と啖呵を切ってみたかった。しかしそれが叶わなくなった今、私は、鉄火場の法でゴト師の汚名を死装束に着せられるくらいなら、天下国家に放射性物質及び核燃料密輸出を海外に横流しした核テロリストの国家反逆者の法被を着せられたい。


馬鹿なイカサマに手を出したとは、己でも分かっております。博徒無頼の看板の代わりに、私がこれまで何を失ってきたか。放射線により、歯が溶け、骨は曲がり、性欲も無くなった。老い先は短く、畳の上で死ぬことも出来ないでしょう。畳の上で死ぬことは、この世界に入ったときに捨てました。だからこそ、死ぬときは盆で死にたいと思っていた。博徒として死にたい、そう思っていた。


長年のイカサマのせいで、今はもう、手が四六時中震うようになりました。今浴びた放射線のせいで痺れているのか、昔浴びた放射線のせいで痺れているのか、それすらよく分からなくなっています。今後私と同じイカサマに手を出す人間もいないでしょう。「放射能の山谷」の「アトミックゴト」は、私と刑事さんの間にしか存在しないゴトです。存在しなくても良いゴトなのです。


改めましてですが、この山谷庄次郎、一世一代のお願いです。この放射線塗れの博徒崩れを、刑事さんのお心で、博徒にしてはくださいませんでしょうか。山谷庄次郎は大の博打好きだった。博打に命を賭け、これを生き甲斐としていた。山谷は博打で大負けし、馬鹿なやり口で金を作ろうとして捕まった。お国の法は破ったが、鉄火場の法は破らなかった。馬鹿ではあった、不義理でもあったが、博打に筋は通した。博徒であった。


そして、そのまま人知れず死んだ。


以上になります。最後になりますが、冥土の土産にもう一つだけお願いが。万が一にも無いとは思いますが、アトミックゴトの手口が他の賭場の連中にバレたと分かった場合、刑事さん、先の一覧を使って私を「売って」はくれませんか。私が放射性物質の所持で捕まり、一つや二つそれが出てきたとなれば、当然連中は私のゴト行為を疑うでしょう。


その時は先の一覧を刑事さんが使って、「山谷庄次郎はヤクザ同士の抗争に放射性物質を持ち出し、敵対組織幹部の暗殺を企んでおった」と公表していただきたい。物証は一覧にもある通りいくらでもあります。ヤクザの抗争に核兵器とこれば、もしかするとソ連と繋がっていたなどという話よりも、そちらの方が世間様のウケも良いかも知れません。


しかしそうすると、一部の輩は「黒須一家が山谷をけしかけた」と要らぬ勘違いをするかもしれません。そこで刑事さんの実績作りも兼ねて、私の動機についてこう説明してやって欲しいのです。「山谷という男は大変な博徒で、親の分際でイカサマ行為を働く賭場の胴元どもに怒り心頭であり、鉄火場の法をもって制裁を加えようとしておった」と。


いくら連中が恥知らずでも、矛を納めるでしょう。連中は連中で、鉄火場の法は恐ろしいはずなので。私がアトミックゴトを仕掛けた連中は、皆なんらかのイカサマをやっております。イカサマに勝つにはイカサマを仕掛けるしかない。目には目を、歯には歯を。裏を返せば皆、バレていないだけでゴト行為は大小必ず手を出している。悲しいかな、それが現代の博徒が置かれている現状です。


マッタク嘆かわしい話ですが、バレなきゃ合法なのは、どこの世界も同じですので。


敬具


昭和46年10月

黒須一家改め野良博徒 山谷庄次郎

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る