第33話

 私を抱きしめ続けて数十分後、やっと、涙が退いた蓮は、私から離れた。


「落ち着いた?」

「うん。なんとか」


 涙を拭う蓮。

 

「先生、呼んでくる」

「うん。お願い」




 数分後、蓮と共に医師がやってきた。

 

「大丈夫そうですね。これなら、近い内に退院できるでしょう」

「そうですか。ありがとうございます」

「いえいえ。それじゃ、私は行きますね」

 

 そう言うと、医師は踵を返すが、

 

「あ、そうそう」

 

 何か、思いついた様子で、ふり返ると私の元へやってくる。そして、私にしか聞こえない声量で——

 

「いい彼氏さん、持ったねぇ」

「え……?」

「彼。一週間ずっと、隣で手握ってたよ。じゃあ、お大事に」

 そう言い残し、去っていったのだった。

 

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