第35話 仮認定試験 ①

「何これ …… 恐すぎでしょ …… 」


 イチは、その地からいて出た奇怪な門から二、三歩離れた。


「イチさん、動かずに」


 八門は、この血の池のような地から出現したグロテスクな門とは対照的に、落ち着いて指示する。


 —— Gu! GuAaaaグアァァァ


 門は、地獄からの叫び声のような音を立て、無数の髑髏どくろが襲いかかってきた。


 —— JyaKunジャクンッ! Jyakuジャク! BaTuNバツン


「うわぁぁぁぁぁっ!」


 イチは突然の事で叫び声をあげる。が、その無数の髑髏どくろはイチの体を一口づつ次々に食いちぎっていく。最初は右肩。右側頭部、頭頂部、腹部、左肩、と刹那的になくなっていく。不思議と血は噴き出ない。


「みんなの …… 体が、消えていく …… 」


 他のメンバーに助けを求めるように目をやると、この無数の髑髏は確認できない。が、奇妙にもイチと同じように体の部分部分が追うように消えていく。


「何が …… 」


 次の瞬間、立方体で空間を美しく正確に区切られた、境が見えないほどの無垢で真っ白な空間が広がっている。広さはかなりある。


「体は …… 無事? ……ここは …… みんなは!」


 イチは、初めに自分の体、続いて周りに目を向ける。


 先程の者たちは立ち位置変わることなく、その真っ白な空間に立っていた。そこにセフェク達だけが見当たらなかった。


「セフェクとトトは …… ?」


 イチが更に振り返り後ろに目を配ると、右斜め後方から、セフェクとトトが体の部分ごとに次々に出現してきた。


「っはっはー! おもしれぇな」


「初見ですと、どうしてもなるのは仕方ないかと」


 セフェクとトトは、変わらず落ち着いた様子だ。


「さっきのは転移法式 …… ?」


 イチが考えを巡らせていると、目の前に綺麗な円環法式が出現し、その中心の正八面体のGateから、遅れて八門が現れた。


「はぁ、はぁ 、はぁ…… 。えっと …… 皆さん、ご協力に感謝申し上げます」


 八門は先程の特異な転移法式の影響なのか、ひどく疲弊した様子ながら、謝辞しゃじを述べた。


「さ、皆さん移動されましたね。ここは『』といい、主に法式の実験テストなどに用いられる場所になります」


 問答モンドは変わらぬ笑顔で場を仕切る。


「さて、イチくん。紹介しますね。私の補佐、目論メロンです」


 問答モンドの横には背の低い女の子が立っていた。頭をすっぽりと覆う程の大きめの格子状でふわふわとした緑色の丸い帽子を被っており、髪色もまた緑色にグラデーションがかっている。服装は白色のあみあみで、生地の方が少ないくらいの装束を纏っている。背は低く、どちらかというと可愛いらしい女の子という具合で、決して力強さは感じられなかった。


「はじめましてイチさん。そして皆さん」


 目論メロンは軽く挨拶をし、会釈する。


「はじめまして。宜しくお願いします」


 イチも挨拶に答えた。


「これより私、目論メロンがイチさんの仮認定試験代行を務めさせて頂きます。今現在よりイチさん以外の方は部外者となります。後方の扉外へモニター室を設けました。そちらまでお下がり下さい」


「っは! 間近では見れねぇのかよ」


「あ、ワシも? そうなの?」


 八千矛ヤチホコも知らなかったようで、仕方のないように一同と並んで後方の扉より外に出て行く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

BEYOND THE STORY Sunny Sunny Sunny @pomegranate_original

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ