第26話 出逢い ⑤
「強くなれるかじゃなく、お前はもう、充分に強いと言ったんだ」
今度は視線をイチから外さずに、真っ直ぐに答えた。
「もう何百年前か忘れたけどよ、元の世界にいる時に『この私を救えるか』と聞きやがった小娘の次に愚問だ。愚問レベル最上だな」
「 そんな、知らない人の話出されても …… 。僕は何をしてでも、何と引き換えてでも、強くならなくちゃいけないんだ。明日にでもジンを使えるようになって、試験に合格して、妹のハレヒメを救い出さなきゃいけない。それでも …… 」
「それが充分に強いという答えだ!」
セフェクは食い気味に即答を続ける。
「命を
「それが答えの理由なの? 二日後にはヤチホコ宮司に力を見せて、試験を受けるに足る許可を得なければいけないんだ! それなのに僕はまだ何も出来ていない! 残されてる時間も
「そうだ、お前は強い」
「何で! 何でそんなに自信に
イチは吐き捨てるように、珍しくも声を荒げた。
「イチ …… お前はすでに正しい決断が出来ると言っただろう? 心を決して乱すな。道が見えている者は、心だけは平穏を保て。心を乱せば、それはお前自身に刃を向けるぞ」
セフェクは、声を荒げるイチに対し、優しく、落ち着きを取り戻させるかのように、丁寧に言葉を伝えていく。
「今この状況下で、命を賭してでも、何に引き換えてでも、成し得たい事があるお前は、次に何て言葉を発するべきか分かっているんだろう?」
——
「 …… うぅ」
イチはセフェクの目を見つめながらも、両の目から真っ直ぐに涙を流している。
「セフェクぅ …… うぅ ………… 」
—— ZuZuZu《ズズズ》
鼻水が続く。
「たす …… けてよぉ …… 」
——
「はっはっはー! おおおう! 任せろっ!!!」
セフェクは立ち上がり、大きく息を吸い、胸を張り、そう答えた。
「 …… え? …… セ、セフェク様?」
ウンウン、と頷きを続けていたトトは、分かり易くセフェクを二度見した。
「イチ! その試験とやらに合格させてやる! そして、ハレヒメも救えるようにしてやる!」
「 …… うぅ、セフェク」
「お前が今出来得る最上の正しい決断だ! 道を真っ直ぐに目指すお前の心に感謝しろ!」
「あ …… ありがとう ………… 」
「よしっ! 今日は寝るぞ! 明日から楽しめ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます