第25話 出逢い ④

 セフェク達は、世界が終焉へ到るまでの経緯、終界ティアレスとなってから多発した紛争、アテン王が秘密裏に進めていた楽園ルルアになる無花果いちじくの実、それを巡ってベゼブとの争いが起こり、自身の父親アテン王が惨殺され、ベゼブを追って次元トンネルで彷徨さまよい、トトの転生、それにより命辛辛いのちからがらこの世界へたどり着いた事、それらを要約しながら、つまみながらイチへと伝えた。イチもまたそれに答えるように、自身の今現在の状況をセフェクヘ軽く伝えた。


「 …… という経緯を経て、オレ達は今ここにいるという事だ」


「 …… 」


 イチのまぶたは半分は閉じ、呼吸時のわずかな動きも感じられず、体は完全に止まっていた。


「 …… 」


 —— TeNNテンッ


「ちょ、無理無理、まっ …… たく理解が追いつかない!!!」


「はっはー! 今はイチの理解力は関係ない。約束どおりオレからは事情を全て話しただけだ。偽りもない。これで終わりだ」


「う …… うん、そ …… そうなんだよね。うん、セフェクの話を信じる。話してくれてありがとう」


 トトは、少し疑問を抱いている素振そぶりを見せる様子だ。いくら素直な人間でも、ここまで大きく常識を越えた内容を話す相手を、受け入れすぎている事に引っかかっているのだろう。


「セフェク達はこれからどうするの?」


「通ってきた扉から考えても、あの野郎ベゼブがこの世界にいる可能性は高い。時系列ではかなり狂ってしまっているかもしれないが、探しに出るしか選択肢はねぇな」


「でも、さっきも簡単に話したけど、この世界には化け物がいて、国の外は危険だらけだよ?」


「っは! まぁ問題はねぇだろな」


「すごい自信だね」


「そうか?」


「 …… わかった。じゃぁ約束通り、最後に僕からの質問に答えてもらえる?」


「ああ、そうだったな」


「 …… 」


 イチは口を閉ざしては唇を噛み、開き、少し息を吸ってから、言葉を絞りだすかのように、小さく声にした。


「僕は …… 強くなれる?」


 質問を受け、今度はセフェクが止まった。


 —— SuNスン ……


「(…… こいつとの時間は短いが、意味もなくそんな漠然ばくぜんとした、間の抜けた質問をする人間ではないだろう? 条件付けがただの質問だと? 回答に強制力もねぇ。仮にオレがその場しのぎで適当に答えたらどうなる?)」


 セフェクは、イチから視線を外し下を向き、しばしし考えてから、少しののちに、再びイチと視線を合わせた。


「(なるほどな …… はっ! こいつもまた …… )」


 視線を合わせていたセフェクは、大きくると、両の手をバチンと叩き、その赤い髪をクシャッとかき揚げては、爽やかな笑みを浮かべた。


「わーったよ! お前の言う強さの概念は分からねぇがよぉ、およそ考えられる概念全てを含めて、一発で答えてやるよ!」


「うん」


「お前は、充分に強いっ!!!」


「えっ?!」


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