第16話 セフェク ⑤
辺りの景色は転移前と変わらず、
「変わらずデケぇーなぁ!」
「こんな状況でなければ、更に成長していたんでしょうねー」
『アン
——
先ほどの左眼は、セフェクの本来の位置へと戻っていった。同時に
「こんだけデカイとよ、吸い上げる水や消費エネルギーとかよ、維持するのもヤバそうで周りもやられちまうと思うだろ?」
「そうですねぇ、夢のない話をするのであれば、
「だろ? こいつは、そんな細かい事は気にしねぇ奴らが作り出した
「よくご存知ですね」
「昔、
セフェクは手を伸ばし、巨樹に触れる。
「そんな中、500mあたりを超えた頃、こいつは突然、一種の法式のようなものを発現したんだとよ」
「樹が法式ですか?」
「ああ、この樹は実が完全に熟すと、その実は落下せずに法式が施され、その場で破裂する」
「
「その破裂した実は細かく
「へぇ、その高エネルギー場で樹の下が守られたと」
「要するに、破裂しちまうから次の世代が残せねぇ。
「樹がそこまでとは、考え難いですねぇ …… 」
「ああ …… でも、こいつはそれをやってのけた」
セフェクは手で樹に触れながら、上を見上げ続けている。
「…… 樹でさえ、周りを救ったんだぜ 」
セフェクの口角が少し緩む。それを見てトトの口角も必然的に緩んだ。しばしの間、この世界ではもはや流れる事もない、春先にも似た暖かい空気が流れた。
——
セフェクはスッと手を樹から離すと、腕の周りがパリパリと音を立て始め、空気がピリピリと緊張し始めた。
「セフェク様 …… まさか!」
「
「えぇ?! ここで何を!」
「おう、
「突然!
「はーっはー!」
セフェクがもう片方の手も前へ突き出す。
「まだだ!」
「え! えぇ?! だって、その先は!!!」
「
もはやトトは、その場に立っていられない程の、暴れ狂う風圧に襲われている。何本もの蒼白いプラズマは、耳をつん裂くようなキリキリと凄まじい音を伴いながら駆け巡り、地はベリベリと剥がれながら、頭上へ巻き上げられていく。
「き …… 禁術ですよ!
「最大法式じゃねぇと、こいつは戻せねぇだろよ! 」
法式は三層に重なり激しい輝きを放っている。セフェクの体には、どこからともなく出現した装束を、ふわりと
「いけぇぇぇええええい!!!!!」
——
セフェクを包み込んでいた光は、砲撃へと充填され、しばしの沈黙の後に、一直線に
辺りの轟音やプラズマなどの様相はお構い無しに、光を照射された
「す …… っご …… 」
トトはギリギリ踏みとどまっている。
やがて、光は瞳孔の許容に戻り、風は産毛を揺らす程となり、空気は落ち着きを取り戻した。
「ほぇー、とんでもねぇ樹だな! 効果あったか分っかんねぇぞ? 足りなかったか?」
セフェクがそう呟くと、頭上からゆっくりと時間をかけ、フワリと一つの果実が足元に降りた。果実は特異な形をしており、
「ギリギリでこれだけしか戻らねぇのか!」
足元からその実を拾い上げる。
——
「うぉっ! めちゃくちゃ重いぞコレ …… 」
「い …… やぁ …… 、何ですかそれ、ヤバみが過ぎますね。計り知れない濃縮
「ああ、異常な
——
セフェクとトトが
「なんダァ?」
——
それらは、この世界に溢れる見慣れた異形の成れの果て達であった。入り口から、次から次へと止めどなく、推し重なるように押し寄せてくる。
——
「おいおいおい、何だ何だ何ダァァァ!」
——
異形達は折り重なりながら歩み寄ってくる。重なりの下の者達は体が圧迫され、異形の形すらも崩し、穴という穴からは体液を吹き漏らし、破裂していく。
——
「うぇ、気持ち悪 …… 」
トトは、あからさまな嫌悪感を
その者たちの、体液混じりの吐き気を
『 アン
「あぁっ!?
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