第4話 百万 一与 ④
階数という表現が適するのかは定かではないのだが、
「おい! ゲイト出現時の映像分析はまだ終わらないのか!」
「早くあの爺さんとの回線繋いでくれ!」
「ごめんなさい! ちょっとどいて!」
「分析急げよ!」
「バカヤロウ! ウチの子供が一人持っていかれてるんだよ! 繋げ!」
中に入ると、広く開かれた
「この奥の部屋で待っていなさい。私からは何も伝えられないけども、あなたにとって大きな決断を伴う事になると思うわ。今はまだ混乱していると思うけど、答える前には一度大きく深呼吸をして、落ち着いて、良く考え答える事よ」
——
社務所までイチに付き添っていた
「タマさん、有難う。カイエンはハレヒメが生きてるって言ってたんだ。だから今はどんな話でも聞いておきたいよ」
イチはすでに決意が決まっていたかのように、落ち着いた口調でハジキに答える。そして開かれた戸の先へと、しっかりと力強く進み歩んだ。
——
戸の先は視界が暗く、そしてとても狭い。
壁には均等に並べられた
壁側に目をこらすと規則正しく顔写真が並んでいる。
一番手前の一枚目は、
その廊下を奥へ進んでいくと、不思議なことにイチの
「
廊下奥の引き戸に差し掛かり、少しの間を置きイチは深い呼吸をした。
「確かめるんだ …… 」
戸をくぐり抜けると、一面には
「社務所の奥にこんな大きな広間が …… 」
実際にイチは錯覚に
広間には座布団が横二列で綺麗に並べられており、奥は少し高台となり、掛け軸が2本、『食前感謝』『食後感謝』と書かれ、生け花と共に格式良く飾られている。
掛け軸の前には大きな長机があり、その机に均一に何か書類を並べていく青年が背中越しに見かけられた。
「あの …… 座る場所とか …… 決められているのでしょうか?」
イチはその青年に小さく尋ねながらも返答を得られないので、居場所を探すように
「トットット、そんな端に座るな、声を張らねばならんじゃろうて」
前方から聞こえたように感じられたが、青年の声にしては明らかに声質が合わない。
イチが不思議な表情でその青年の背に目を配っていると、書類を机の真ん中から右半分まで並び終えた所で(
「 …… 」
「 …… え? えーっ! いやいやいやっ! ぼ …… 僕じゃないですよ!」
青年は声の主が自分だと思われるとは
——
と中心を失った。
「あっ …… ご …… ごめんなさい。どなたか他にいらっしゃいますか?」
どう目を凝らしても辺りに誰もいないのは明白であり、イチはこの質問が不自然である事は理解しながらも、腰を抜かした青年にこう聞くしかなかった。
「トットット、見えておらぬな? 見えぬは恐れよなぁ」
イチは声の主に言われるがまま、導かれるままに必然的にこの空間に恐れを感じ始めた。
「
イチは声の主とのやり取りに緊張を感じ始めたせいか、入り口から
「状況把握の終えていない
——
「トットット、すまんな。タイミングが良すぎてつい遊んでしまったわ」
長机の向こう側からピョコンとモフモフの兎の耳が飛び出ると、それはスイーっと机の端へと向かい、机の終わりから声の主が現れた。
「イチヨ、直接顔を合わせるのは初てかな? この
「は …… 初めまして …… 百万一与です。ヤチホコ宮司」
イチは満載のツッコミどころを、脳内で一つづつ潰しては冷静さを取り戻していった。
「皆も揃ったのぉ」
カイエンと共に部屋に入ってきたのは、同じ十二歳クラスの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます