第13話
ヒナタと並んで自転車を押して歩く。
雪がハラハラと落ち、地面を所々白く変えていく。
………。
親父がセッセとスコップで雪を集め固めていく。あっという間に小山が出来上がる。
多分、俺はポカンとしてみているんだろう。
そこから親父はニヤリと笑い、小山の中身を抜いていく。
…………。
「ヒナタ、聞いていい?」
うん?とこちらを向く、ヒナタ。
「雪の山でさ、人が入れるヤツ、なんていう?」
「お茶碗被せたみたいな形?」
「そ」「カマクラ、かな。どうして?」
「親父が作ってたなあって、今思い出した」
親父のことなんかいままで考えたこともなかった。思い出したことも。最近、なんか頻繁に出てくる。どうしたんだろ、オレ。
雪で覚えているのはお袋に手を引かれて逃げていたこと。親父に殴り倒され、裸足で逃げたことだ。その後すぐに捕まり再び殴られた。
親父に関してはいい思い出ってなかった。
飲んで、暴れて。
それだけ。
ただそれだけのヤツだと思ってたのに。
クソっ!
「ナツキ、大丈夫?」
「ゴメン、大丈夫だよ」
自転車を止め、スタンドをおこす。
軽く、グータッチ。
「ついちゃった。また明日ね」
「おやすみ」
名残惜しげにグータッチから握手したままの2人の手。言葉もなく、ずっと。
「冷えるよ。早く入れよ」
「うん、またね』
ヒナタが完全に家に入ったのを確認して家路につく。
また、明日ね。
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