第11話
ご飯も終わり、コウスケが帰ってからも2人でコタツに入ったまま、時間だけがゆっくり過ぎていく。時計の音がうるさく聞こえるくらいに静かだった。
今までどれくらい、こんな暖かな部屋でのんびりと過ごしたんだろうか?ゆっくりと誰かとご飯って……。
「……ナツキ?」
ヒナタと目があう。思わず下を向いてしまう。
「どうしたの?」
心配そうなヒナタ。
「なんでもないよ。あんまり幸せ過ぎて怖いな、って。こういうのが普通なのかなって考えてた」
ごまかすような照れ笑い。
コーヒー、入れてくるとヒナタは立ち上がった。
炊事場からコーヒー2つ持ってきてコタツに置く。ふうっとため息をついて。
「普通って、ソレゾレ、なんじゃないかな」とヒナタ。私の考えなんだけどね、と前置きしてから
「うちはお父さんが仕事に行ってお母さんが家にいる。私は学校。ずっと日本でココで暮らしてた。駅向こうの友達、フウちゃんはお父さんお母さん仕事に行ってる。何年か前に日本にきてその前もその前も違う国にいたって。幼なじみのリュウスケはお父さんしかいない。みんなそれぞれ家族の形があってそれが普通って思ってる」
だよね、と言ってコーヒーを一口。
「ナツキにはナツキのイメージしてる普通ってのがある。結局、普通ってないんじゃないのかなって思う」
禅問答のような話しに少し頭をかかえる。
どこかにいるかも、いないかもわからない母を探すのも普通?
静かに時間だけが過ぎていく。
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