第10話

2人コタツに入りぼんやりテレビをみていた。最初、ヒナタの部屋でテレビをみてめちゃくちゃ驚いたオレを未だにからかう。

「だって知らなかったんだから仕方ないだろ」

オレはブスッとして返す。

「まさかさ、これも知らないとか?」


ピッとリモコンを壁に向けて押す。

壁には白い四角い物がついている……。

と、それが動き出し?


「はあ?」ポカン、と俺の口が開く。

「やっぱり知らなかった。もしかしてって思ったから」

この赤いボタンを押すと暖かい風が出て部屋が暖まるの、冬に使うんだよ、と説明。

そりゃ夏の暑いときに暖かい風はいらんだろう。と、オレ。その夏がきたらこの青いボタンね、とヒナタは笑っている。


「ほら、暖かいでしょ。上着脱ぐね」

オレは平気だったが寒かったのか?

「ゴメン、気づかず」

「大丈夫。番組変える?」

これが普通ってヤツなんだろうか?

オレには全くわからない。

物心ついた頃にはいつも親父が暴れていてお袋が泣いている光景しかみたことがなかった。家の中の物もいつもボロボロに壊れていた。お袋は今、どこでどうしているんだろうか?


「ようっ、お二方。飯はいかがかな?」

コウスケがおどけて弁当を手に入ってきた。奥さんお手製のスペシャル弁当だ。

「デザートもありますぞ」

グッと親指たてる、コウスケ。

ダサいよ、とヒナタに突っ込まれていた。


みんなの温かな気持ちでオレは包まれている。今まで全く知らなかった、知ることさえできなかった思いがヒナタに出逢い、奇跡が連鎖的に起きている。どう返せばいいのだろうか?


このままでいいのだろうか……。






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