第9話

玄関入って、右にトイレ。上がって左手に炊事場、その奥に風呂場。

炊事場を背にして奥に2部屋。裏には少し広めの庭のようなものまで。


左側の部屋に小さなテレビが置いてあった。

その前に丸いちゃぶ台。


右の部屋には布団が二組。

………?

えっ、二組?


「まだ早いがいずれいるだろが。それとも1つの布団で?」

バイト先の先輩がニヤニヤしながら荷物を置いていく。

「なんのことですか!!」


耳の先まで真っ赤になりながら炊事場をのぞく。

さっきみたときに何か、あったような……。


あっ、歯ブラシも二つ!!

「先輩っ、何を考えてるんですかっ。いい加減にしてくださいよ」


「食器も終わりです」

「こっちもっす」

次々と終了の声が上がってく。


「ご飯の用意もできてますよ~」

ヒナタたち女性陣の声も。


倒壊寸前だったあの団地の離れの家がみんなの手で見違えるような立派な家に変わった。荷物もみんなが持ち寄りカンパしてくれた。





「ナツキ、ご飯!早く。なくなっちゃうよ」

ヒナタの声に我に返る。

「すぐ行く」


みんなの輪の中にいながらも俺は不思議な感情に包まれていた。



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