第4話 榛名恵
「ふむふむ、そういうことね」
大川の話は思いのほか面白かったけど、それでも半分くらいは聞き逃していた。どうやらお姉さんが急に実家に戻ってきたみたいで、大川は綺麗にその地雷を踏んでしまったということらしい。家を出た女性が実家に帰ってくる理由はきっと夫の浮気だろう。
「それで、浮気相手はどんな人なの?」
「それがな、どーも俺は信じられないんだよ。敏くんってさ、たしかに無口で愛想ないんだけど結構優しくてさ、浮気するようにはどうしても思えないんだよね」
質問に答えないところはもう慣れている、敏くんというのはお姉さんのご主人さんのことだ、名前はたしか丸山敏治といって漁師をしていたと言ってたような気がする。
「でもお姉さんが帰ってくるくらいだから、証拠とかあったんじゃないの?」
「そうなんだよな~、近所のおばちゃんが仕事終わりにファミレスで二人でコーヒー飲んでるところ見たらしくて…」
「それだけ?」
「最後まで聞けよ、怪しいと思って姉ちゃんが机を調べたんだって、そしたらなんと熱烈なラブレターが出てきたんだってよ!姉ちゃんいままで一回もラブレターなんてもらったことないから頭きちゃったみたい」
「それは決定的ね」
「そうだろ?それで姉ちゃんが帰ってきちゃったってわけよ」
「ただ、いまどきラブレターとかファミレスで密会とか、なんか昭和な浮気だね」
「まぁそうだな、榛名はラブレターとかもらったらどうする?」
「考えたこともなかった、でもインターネットの時代にそういう古風なことするのも一つ手かもしれない…大川、このアイデア使ってみる。じゃあまたね!」
「んっ?なんのこと、ってかラブレターもらったのか!?」
私は足早にその場を後にした、その夜、勉強の合間にカヨちゃんへ手紙を書くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます