第44話 さよならのメリークリスマス-5-

ちゃんと、多分、上手くいった筈だと思う


ねえ、ハルさん?

なのに、どうして笑いながら悲しそうなの?


それと同時に、兄貴やたなりゅーの少し感じた違和感が何故か関係してる気がした


笑っていて、こんなに楽しかったのに


なにかが、僕だけが分からないなにかが違ってた?


ハルさんは下を向いてしまった


なにかしてしまったのだろうか


アルコールが残る頭で考えても、、分からない


聞けば済むこと


でも理由は分からないけれど、聞いてしまうとなにか良くない気がする


でも、聞かなきゃ、分からない


「ハルさ、、」


「あ、そいえば、あたしも渡すものがあるんだ」


ハルさんは顔を上げ穏やかな顔で、言った

ポーチから小さな小さな箱を取り出した


開けてみて、とそんな表情をしていた


綺麗なピアスが入っていた


「あたしからもっ」


「あ、ありがとうございます」


ピアスを外して、貰ったピアスをつけた


綺麗なストーンのピアスだった


そっと耳元に手が伸びて、ハルさんはとても嬉しそうな表情を浮かれべた


良かった、渡せて、、小さく言った


その声色は、何かが違った


「ねえ、ハルさん?なにか、、あるの?」

そうとしか聞けなかった

何も分からないから


一瞬、初めて見るような


ほんの一瞬だけ


ハルさんは意を決したような辛そうな顔をした


どうして、そんな顔をするの?


僕はその先が怖かった


何か予想もつかないけど、そう思った


少しの沈黙

だけど、とてもとても長く感じた


「あたしね、春になって、卒業したら離れるの」


そういえば、ハルさんの進路とか全く聞いていなかった


離れた大学でも行くのだろうか?

離れた所に就職するのだろうか?


離れるの


この街を離れることは理解出来た


でも、その言葉には、何処へ?と聞く前に、僕の中で信じたくは無い確信みたいなものが生まれた


会えなくなるほどの、離れる


遠く、遠くへ行ってしまうような


沈黙が続く、ハルさんは場所を言わない


僕は何処へと聞けない


言葉にしてしまったら、もう戻れない気がしてならなかった


でも、そうなんですか

って、聞かずに流して終われない


ハルさんは伝える覚悟をしてる顔をしている


それが怖くて、逃げて、聞かない


そうなんですか、なんて言葉で終われない


今日、ここから思っても、想像もしてない別れ道になる事実をうけとめなければならない


どうして、どうして今日なんだろうか

どうしてじゃない、今日だからこそなのかな


ハルさんは僕の覚悟を、言葉を待っている面持ちだった


手に汗が滲む


でも、知らなきゃ

春になったら、残された時間とその先、どうなるのか

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ハルシオンとキャンディデイズ みなみくん @minamikun

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