第26話 棚岡隆也とハル先輩-6-
「いやーホンマ習っといて良かったですわ」
マネージャーさんを送り届け、うちへと向かう最中
たなりゅーはしみじみと感じで言った
「あんたホントにバスケ辞めたら真剣にやってみたら?かなり筋がいいよ、師範(せんせい)も褒めてるし」
「そりゃおおきに。でもまあ俺は護身程度で充分ですよ。それと、多分もし同じ体格だったら圧倒的にハル先輩のが」
ねえ?とばかりに僕にふる
「あの人首むちうちで多分顎の骨いってはりましたよね。はひゅーはひゅーゆーてましたもん。俺のやったやつは割と平気そうでしたし、適わへんですわ」
ハル先輩は恥ずかしそうに、違うとかあれはとか慌てていた
ブラックジョークすぎるよ二人とも、と内心思った
「大丈夫?痛む?」
ハル先輩は心配そうに覗き込んでくる
つい先程人の顎砕いた人とは思えないギャップ
「ていうか、流石にあれは引いちゃうか」
「いやいや、あれくらいでいいお灸ですよ。ねえ雪くん?」
フォローを促すたなりゅーに僕は応えた
「情けない話、たなりゅーと先輩が戻って来なかったらどうなってたかって感じだし、ほんとありがたいですよ」
「でも、原因はあたしだし」
下を向くハル先輩
「悪いのは粉かけたあいつでしょーに。ハル先輩も雪くんも被害者だし正当防衛の範疇ですあれは。そもそも、自分より強い武器持ってる奴に武器突きつけて挑発します?バットや鉄パイプでマシンガン相手になるかって話しですよ。結果なんて分かるでしょ?単にあいつらはそれをした。それだけの結果でした、以上」
おしまい、と言わんばかりにたなりゅーは切り上げた
ややあって、僕のうちに着く
冬馬君(兄貴の名前)に謝るとハル先輩
小遣い貰ったからお礼とお土産にりんご飴をとたなりゅー
そんなわけで3人でうちに来た
「ただいまー」
「おう、雪。ってどうしたその顔」
結構腫れてるのか、そんな分かるくらいに
「冬馬君すいませんあたしのせいで、例の変なのに巻き込まれて雪くんに怪我させてしまって」
「相手は顎砕かれて首むちうちになりましたけどね。冬馬君お小遣いあざっした。お土産のりんご飴と焼き鳥です」
「ま、ならいいんじゃね?流石にもう無理だろそいつも。確かキッチンの棚に湿布あるし、今持ってくっから冷やしとけよ雪。あ、2人とも飲んでく?」
たなりゅーから受け取ったりんご飴を齧りながら兄貴は何も追求してこなかった。
リビングでハル先輩に湿布を貼られて
たなりゅーと兄貴は焼き鳥をつまみながらビールを開け始めた
時折こそこそとなにか話してる様子だった
意味ありげな視線がなんだか気になった
「あ、ちょっとつまみ足りへんからコンビニ行ってきますわ」
「俺も見て決めてーから行くかなー」
なんか不自然な口振りで一缶飲み終えた兄貴とたなりゅーは颯爽と出てしまった
「ハル先輩は飲まないんですか?」
「雪くん今日飲めないでしょ。あたしもやめとく。」
そんな気を使わなくてもいいのに、未だに申し訳無さそうな顔をしてるハル先輩
「先輩、本当に気にしないでくださいよ。そりゃ先輩やたなりゅーと比べたらあれですけど、そんなひ弱じゃないですよ?それにそんな子供でもないんですし」
少しだけどやっと笑ってくれた
「んで、隆也的にはどうなの?」
「先輩後輩以上っすね。今日で確信ですわ」
「まさかハルが泣くとわなー」
冬馬くんに事細かに話すために2人で外に出た
冬馬くんも驚いていた
「鬼神、武人、破壊の女神、ジャンヌダルク、壊し屋、喧嘩屋、、こんだけの2つ名を持つハルがまさかねぇ。。。」
「てゆうか、冬馬君は少しも予測しーへんかったんですか?」
「まさか。雪はお前以外に歳近いやつと関わろうとしないし、ハルはチャラチャラしたのはもちろん嫌いだし、してなくても、男に興味がある感じとか全くなさそうだったからな。でもまあ面倒みいいとこはあるしさ、まあ弟みたいに可愛がってくれるかなーてのと、歳近いやつと少しは交流がお互いもてていいかなーくらいだったよ」
「雪くんって、なんでっしゃろね。別に子供っぽいとか、そゆんは無いんですが、先輩って感じもしない。なんか不思議な雰囲気ですよね、客観的に見ると」
「その不思議さにハルが変わった?」
プシュッと音を立てビールに口をつける冬馬君
「そーでおま。まあ母性本能に近いものかほんと溺愛してる弟にも見えるし、そうじゃないとも見えますからホントの答えはまだ出せないですけど」
「んでも多分ハルにはあんま時間が残ってないしなー」
「?なんがですのん?」
「いや、まだ問題視する事じゃねーしいいや」
そうかそうかと感慨深い感じを出しながらどこか嬉しそうな後ろ姿の冬馬君だった
え、オレとマネージャーの話は食いついてくれへんし、振ってくれへんの?
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