傀儡師の末裔

第12話、人形屋「匠」

俺の名前は、人形 匠(ひがた たくみ)人形師だ。


32歳、独身である。

身長176cm、56kg。

黒髪・黒瞳で、肩までの長髪は後ろで束ねてある。


一応、小さな店を構えている。

俺の作る人形は、こけしからぬいぐるみまで様々だ。

店の前にはガチャガチャを2台おいてある。

中身は俺の作った人形で、200円と100円の2種類がある。


200円の方は縁結びの人型木片2体入りで、100円の方は集中力アップの人型木片だ。


一応、そういう切り方をしてあるので、効果は見込めると思う。


それとは別に、特注で受注もしている。

一般的なのは3000円で、合格祈願や必勝祈願など、本人が希望する場合に受注している。


「ごめんください」


「あいよ、らっしゃい」


「あの……、どうしても告白したい人がいるんです」


「それで?」


「告白するべきか迷っているんですけど……」


「3000円だけどいいのかい」


「はい。私の心を彫ってください」


「あいよ。こん中から好きな木を選んで」


「これでお願いします」


俺は少女の選んだ木を、切出で削っていく。


30分かけて削りだしたのは別の少女の顔だった。


「これが、お前さんの望んでいるものだ」


「はい!ありがとうございました」


俺は3000円受け取って、少女に人型を渡した。

大方、友達の彼氏を好きになったとかいうことだろう。

だが、彼女の本心は友達を選んだ。

最初から分かっているのに、背中を押してもらいたくてここに来るのだ。


俺は人形師。そして傀儡師であり、呪禁師(じゅごんし)でもある。

だが、本当の俺を知るものは少ない。

対外的には人形屋のおっちゃんである。




「カア♪  シゴト シゴト」


ああ、またあいつの使い魔がやってきた。

この家には、電話というものがない。

呪禁師にとって、言葉というものは凶器と同じである。

電話に出た途端、「死ね!」といわれたらどうするか。

だから、電話はおかないのだ。


だが、あいつ……斡旋屋のキララだけは使い魔で俺を呼びつける。

断ろうとすると、俺の黒歴史を暴露するとか言って脅してくる。

なんだ俺の黒歴史って……

思いあたるものは無いはずだが、自信満々で宣告されると若干不安になってくる……


だが、あいつの回してくる仕事は最低100万だから、まあいいか程度に引き受けている。

たとえそれで、死人が出ようと、俺の責任ではない。

俺は、依頼された人形を作るだけだ。

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