第11話、イフリート
「如何でございましょう。
世界初の無公害火力発電でございます。
しかも、コンバインドサイクル発電ですよ。
ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて熱効率50%以上を達成できます」
「だが、それだとわしはボイラーの中に籠らねばならんだろう」
「大丈夫です。
持ち場を離れる時には、LNGが供給されるようになっております」
「本当にそれだけで酒が飲み放題なのか」
「そこは保証されております」
「しょうがないのう、とりあえず一か月じゃな」
わしはイフリート。
火の精霊なのじゃが、異世界職業斡旋所のトコウニとかいうお兄さんに勧誘されて、火力発電所で働くことになった。
まあ、特にやることもないので、暇つぶし程度に引き受けた訳じゃ。
わしの仕事場は、ボイラーの中じゃ。
そこで燃えちょればいいのじゃから楽な仕事といえば楽じゃな。
精霊じゃから、トイレも必要ないし、食事も不要じゃ。
酒さえあれば、何も必要ない。
わしは時々ボイラーから出て、酒を一気に煽って中に戻る。
まあ、寝てる間も燃えるから、完全にクリーンエネルギーじゃよ。
酒の空き瓶は増えるが、その程度は問題ないじゃろう。
これで、出力は40万kw。
小規模の都市なら賄える発電量らしい。
わしは調子に乗ってガンガン飲んで、ガンガン燃えたね。
ところが、調子に乗りすぎたようじゃ。
一か月の試験期間で、良好な数値は出せたのじゃが、高温すぎてタービンの羽の半分が溶けてしまったようじゃ。
細かい温度調節なんかできんからのう……
結局メンテナンス費用がかかりすぎて、実用化には至らなかったようじゃ。
わしとしても残念じゃよ。
ところが、この電力会社は諦めが悪くてのう。
ボイラーの容量を2倍にして、ガスタービンをわしから離すことで改良型コンバインドサイクル発電を作りおった。
しかも、蒸気タービンを3基増設して出力も大幅アップじゃ。
これで、問題はクリアじゃ。
全国の火力発電所が、イフリート族を採用すれば、原発なんぞ不要じゃぞ。
発電原価に大量の酒が含まれちょるが、まあ問題なしじゃ。
どうかね……電力会社殿
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