狼女だぞ

第4話、警察犬指導係に配属されました

「ごめんください」


「いらっしゃいませ」


「あの、能力があれば、仕事を紹介してもらえるんですか?」


「はい。どのような能力をお持ちですか?」


「能力といえるのか……、私、狼女なんですけど」


「まあ、ちょうどいい募集が入ったばかりですよ」


「どんな仕事なんですか」


「二口ありまして、一つは警察犬の指導係と、もう一つは警察犬そのものの募集です。

募集要領には、犬語を話せることとありますけど、大丈夫ですよね」


「あっ、それならどちらでも大丈夫です」


こうして私は、とある世界の警察にお世話になることにしました。

こういう言い方をすると犯罪者みたいですが、ちゃんと就職しましたよ。

訓練施設に寮もありますので、どちらかといえば住み込みです。


「大神響子。27歳、独身です。

狼女です。よろしくお願いします」


「おお、狼女さんとは、好都合だ。

私は警察犬指導課長の犬養です。

では、訓練施設に移動して早速部下達に紹介しましょう」



「今日から仲間になる大神君だ。

狼女なので、指導職と警察犬の兼務になる。

よろしく頼む」


「よろしくお願いします」


犬たちに会いに行くと、みんな尻尾を股の間に隠してしまいました。

絶対的強者に対しては敏感なんです。


ワオン(萎縮しなくていいよ)


ワン(無理ですよ)


ワンワン(今日から、私がみんなのボスだからね)


ワワン(姉さんの指示に従います)


ワオン(何か、困っていることはないかい)


ワン(肉が食いたいです)


ワン(優秀な奴には、肉を出してやろう。味付けなしの半生でいいよな)


ワン(さすが姉さん、わかってらっしゃる)


以下、カッコ内は犬語です。


「みんないい子ですね」


「だが、成績は芳しくないんだ」


「何かあるんですか」


「ああ、遺留品から犯人を追跡できないことが多いんだよ」


それは、指示の出し方や、犬の反応を読み切れていないのではという言葉は飲み込みました。


実際の訓練です。


(これと同じ匂いのものを見つけるんだ)


(簡単でさあ)


会話が可能なら、この程度は朝飯前です。


その日から、簡単な空き巣でも動員がかかるようになりました。

でも、泥棒の場合、私たちは潜伏先を確認するだけで、あとは別部署に報告するだけです。

悪質な傷害事件の場合は、その限りではありません。


私の直属のパートナーはジャーマンシェパードのアルファです。

あまり、優秀ではないとのことですが、まあ、証明してあげればいいだけです。

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