第3話、事件発生

実際のところ、遺失物の相談でタイムリープを使うことはほとんどありません。

出てくるだろうという期待感の方が大きく、よほどのことがなければ依頼されることはないんです。

したがって、私は遺失物の窓口に座りながらも、オレオレ詐欺専門になっています。


着任して一か月。

解決件数が5件で、未解決はゼロです。


「素晴らしい!

オレオレ詐欺が多発して以来、月間の被害がゼロなんて総監賞ものだよ。

しかも、未然防止率100%だからね」


「お役に立ててよかったです」


「本部長、管内で銀行強盗が発生しました!」


「ほう、今時銀行強盗とは警察に対する挑戦としか思えませんね」


「それが、人質をとって立てこもっているんですが」


「発生時刻は?}


「30分前です」


「それならば、時任出番だね。

至急詳細をメモ書きにしてきなさい。

私は、3時間前の私に宛てた文書を書こう。

で、未然に防止するにはどうしたらいいか対策会議を開くんだ」


こうして、所管のメンバーが集まり、対策が確認されました。


私は本部長室から3時間前にジャンプします。




「本部長、銀行強盗です。

詳細と対策もこちらに」


「なに!

面白いではないか。

相手が銃を抜いた瞬間、現行犯で取り押さえるんだな」


「ただ、この時間の私には気づかれないようにしてください。

でないとタイムパラドックスが発生して、どう変化するのか予測できなく借りますから」


「わかった。

全課長を集めて、極秘裏に出発させよう」


「パトカーだと相手に気づかれる恐れがありますから、一般車で」




「という次第だ。

対応者は防弾チョッキを着用のうえ、車に分散して現地へ向かうように。

万一の事態に備えて、時任君も現地へ行ってくれ。

もし、けが人が出た場合は対処してほしい」


「はい」




こうして、万全の態勢で犯人をお待ちします。


「おとなしくしろ」


チャ


「お前がな」


30人が拳銃を構えて犯人にむけます。


「な、なんでバレた……」


「警察を甘く見ないことだ。

本部長に連絡、犯人確保」


「外の運転手も確保しました」



この一件が評価され、本庁に特別凶悪犯罪対策室が設置され、本部長は室長に。

遺失物係長は対策室の課長に。

そして私は正式に採用となり、特別凶悪犯罪対策室に配属されます。


異世界職業斡旋所、あなたも見つけられたら覗いてみてください。

窓口にいるキララさんに、どんな特技でもいいですから相談すれば、きっと適職を紹介してもらえますよ。

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