第3話 憂鬱・宿食・謎

私は鏡で久しぶりに自分を見る。あまり食事を取れないゴミ捨て場状態の牢屋の中で半年過ごしてお母さんが生きていた頃よりもだいぶガリガリだった。これが、売れ残り奴隷の扱いだ。普通に生活できる人とは明らかに見た目で健康状態が違う。私達が特別食事が少なかったわけではない。売れ残り奴隷よりマシなのが一緒に買われたもうひとりの女の子だ。彼女は店頭で常時見世物にされるため嫌でも無理やり食べさせられ、健康な状態に見えるぐらいに保たれている。だから彼女は私達と違い、馬車の中でも軽いものではあったが、わたしたちよりは最初からちゃんとした物を食べさせられていた。

 私の髪の毛は彼女にある程度整えられて、肩までの長さの綺麗な黄緑色がしっかりとホコリなどなく陽の光で輝いている。男の子、私よりも身長は高いが髪の毛は真っ赤な赤色。彼も私同様整えられているが相変わらず短髪でボサボサだ。

 

「あ、あの…」


「な、何なんですか…来ないで…くだ…さひぃ」


もうひとりのプラチナブロンドで短髪の女の子が上にいる彼女、アイナの分身体と思われる彼女に話しかけようとベットを登りなが声を出した。しかし、すぐに分身体は反応し、逃げるように壁に当たるまで下がっていく。


「来…ないぃで…」


彼女から布団が剥がれ涙目状態で壁に背中を押し付けている。もう下がれもしないのに足と手を使って下がろうとしている。


「あ、あの…アイナさんですよね?」


話が進みそうも無いので私がベットの下から彼女に問いかける。


「そうです!そうです!お願いだから乱暴しないで…」


反応が完全に自身が奴隷になったはじめの頃に似ていると思えた。


「あ、あなたはアイナさんの文身体ですよね?わ、私達…は食事と…衣類とかを見て回れと言われました」


話し始めたときにビクつき、話しているときも何故かビクつき、かなり話しづらい雰囲気が漂ってきました。


「あなたは私達のことを任された、管理人として残されたと考えていいのですか?」


と聞くと彼女は2回頭を上下に振った。他二人は完全に怯える彼女に逆に怯えかなり話しかけにくい状態になっている。私はお母さんが生きていた頃、おえらいさんとかと会ったり、お話する機会が少なからずあったため、なんとか話せている…はず。


「取り敢えず、食事に行きませんか?」


「こ、怖い。いやだ…よぅ…」


嫌なのか…


「あ、私も、あの…お腹すき…ました」


ここでもう一人の女の子女の子が自分の意を伝える。


「やだ…外でたら人に合わなきゃいけない…でも外でないと怒られる…」


えっと、対人恐怖症と呼ばれるものだろうか。


「こ、これあげるから…ご、ご飯買ってきて、ね?私、ここ、うごかない…」


そう言って彼女はお金が入ってると思わしき袋を私達に投げてくる。投げられた袋を拾った私達は互いに顔を見合わせ、最終的にこう思った。


『分身魔法ってこんな魔法じゃなかったよね!?』



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その後あまり遠くに行っても迷う可能性があったので、私達は宿の人に食事関係のサービスが無いか聞き、結果としてあったので部屋まで四人分届けてもらうことにした。幸いも私含め全員最低限のお金の価値や物自体は、奴隷になる前と変わっていなかったため問題なかった。まあ、そんな一年立たず勢い良く変わるのは改革レベルだからそうそう無いだろう。


「食事後は部屋の外、入り口横においてある台にまとめて置いて下さい。それでは失礼します」


宿の人が食事を四人分届けてくれた。食べ物としては肉入りスープとサラダ。そしてご飯と水である。至ってシンプルで安いのを注文した。アイナさんにはもう少しいいのを頼んだので私達よりも明らかに量と中身が違う。最初は食べないかと思ったが、3分ぐらいで彼女は完食して布団に戻ってしまった。食欲には勝てないようだ。


そんなこんなでまだ52時と昼でもなくおやつを食べる時間でもない微妙な時間になってしまいました。しかし結局彼女は73時まで自由でいいといと言って布団に潜ってしまったので一階のカウンター横にある小さな購買で服を買い、カウンターを挟んで反対側の待合室のようなところにおいてある本を読みながら、お互いのことを少し話し、時間を過ごした。

 

 それで約束の73時、私達は部屋で一つのベットに座っていた。彼女を除いて。


「帰って…帰って…か、帰ってきた…」


少し前にもうすぐ帰ってくると言って五分ぐらいずっと「帰って」と連呼していた。

そして最終的には「帰ってきた」で静になる。5分ぐらいずっと「帰って」を聞いていた私達はただただ疲れただけだった。


「たっだいま~!」


と、彼女が「帰ってきた」を言って5秒ほどで扉が壊れるのではないかという勢いで開け、中には行ってくるオッパブパブ行った方のアイナが入ってきた。


「ご飯食べた?服買った?」


と聞いてきたので


「お昼は食べさせてもらいました。服は下の購買で3着ほどセットで」


「そう、じゃあ夕飯食べに行くからその服に着替えて準備しておいてね?」


そう言い彼女は自身の分身に近寄っていく。ベットのはしごを登り彼女は言う


「おつかれ、頑張ったね。ごめんね毛布出し忘れて。ゆっくり休んでいいよ」


彼女はそう言いながら彼女の頭を擦る。


「バカ」


そう分身体の彼女は言い残したくさんの光の玉となり消えていった。

彼女はそれを見届けるとベットから降りてくる。そして振り返り私達にこういった。


「着替えながらでいいけど、何食べたい?」


「遠慮しないでいいよ~」と笑顔で言いながら聞いて来る彼女のことを、私は本当の厚意で言っているのだと理解した。

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