ゲームと油断

「ゲームは簡単だ」

そう言って青年は召使にテーブルに準備をさせました。

「ここに1から6の数字が書かれたカードがある。プレイヤーのどちらかがこの中のカードを選んで伏せておく。それを見ていたプレイヤーがその数字を予想する。プレイヤーにはチップが12枚、配られる。1つ数字を予想するたびに1枚チップを出す。つまり、予想する数字の数の分だけチップを出す必要があるわけだ。一度使ったカードは2度と使えないからな。そして互いに5回やった後手持ちのチップが多い方が勝ちだ。途中でチップがなくなればその時点でゲームオーバー。」

 少年はとても苦々しい顔になりました。簡単なルールです。しかし、簡単だからこそ彼は勝てると信じ提案をしてきたことに気づいたのです。

「なるほど、簡単だけどいかさまはしやすいってか」

 少年はそうつぶやきました。

「おっと、そんな面白くないことはしないぜ。これはゲームだ。そんなのは無粋だ。俺は本気の勝負がしたいんだよ」

 青年の目は狂っていました。それは何年のも妄執にとらわれた狂人の目でした。

「それにな、俺は本気でお前に勝ちたいんだ。何もせずにも勝てるお前に負けてすべてを失う味を教えてやりたい」

 青年は狂気の目で少年を見つめます。そこには絶望を味わったことのある人だけが知ることができる歓喜の味をのせていました。

「わかった。俺がここで全てを終わらせてやる!」

 しかし、少年は絶望を感じたことは今までにありませんでした。だから青年が持つ目の意味に気づきはしませんでした。

「さあ、ゲームを始めようか」

「ああ、It‘s show timeだ。俺に跪きな!」


 こうしてゲームは始まりました。

 ゲームはずっと青年が優勢で続きました。

 そして最終ラウンド

「お前はよく頑張ったよ。人の得意なゲームに乗ってぎりぎりまで戦ってでも、これでお前の負けだ。さあベッドだ。俺はこのカードにオールインだ」

 青年は笑いながら勝利を確信した宣言をしました。

「何を勝った気でいる?お前は詰めがあまいんだよ」

そういって少年は宣言しました。

「勝負に乗ってやるよ。コール。最後のカードは4」

そして青年が提示したカードがオープンされました。

そこに書かれていたのは4の数字でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る