出会いと勝負

 これは遠い昔の話です。この国では一人の女王様が国を支配していました。女王様はゲームがとても好きで、国の行く末を決める政治ですらもゲームで決めておりました。そんなある日、彼女のもとに1人の少年が訪れます。

 彼は門の前に立つと近くにいた衛兵にこう言いました。

「俺は、ナルミ・ハイルンッヒ。女王に謁見を求める。彼女に俺の名前を伝えてくれ、すぐに通してくれるだろう。」


 衛兵は、その少年を怪しい目で見ながらも余りにも堂々とした少年の姿に気おされて一人走り出しました。

 しばらくすると、衛兵が駆け戻ってきました。そして


「お前の入城が許可された。女王様の前で粗相をしないように気をつけるんだな」

と言い門を開けました。

 門の中に入った少年は迷うことなくまっすぐ女王様のいる広間へ向かっていきました。

 少年が立ち止まった先には玉座に座った1人の少女と傍に立っている青年がいました。少年は少女に向かって大きな声で話しかけました

「おい、マヒロ、なにやってんだよ。こんなことやめろよ、クレア先生も孤児院のみんなも誰もこんな国を望んでいない。」

そうです。女王と少年は知り合いだったのです。

「晴には関係ない。これは私がやらないといけないことなの。でないとみんなを守れない。孤児院のみんなと、クレア先生も、ナルミを助けるためにも私はここで逃げ出せない。」

「やめろ、マヒロ!」

 少年は女王となり暴虐を働く少女を止めようとしていました。2人の間に険悪な雰囲気が漂います。そこに1人の召使が現れます。

「女王様、私に提案がございます。彼とゲームをしてみてはいかがでしょうか。」

 少女はどこか狂気をはらんだ笑みを見せると

「それは面白いわね。どうするナルミ?私はいつでも相手してあげるけど。貴方が勝ったら私はここを降りる。私が勝ったら、もう邪魔をしない。それでどう?」

 少女は楽しそうに少年に提案をします。けれど少年はその態度に怒りをさらに募らせます。

「いいかげんに目を覚ましてくれ、マヒロ! こんなこと意味がないんだ」

 少年はなおも声を掛けます。しかし、少女は

「そんなことはもういい。私はあなたと勝負がしたい。」

そう言い、何か決意を固めた表情を見せました。その表情からは何も読みとることはできませんでした。少女は少年の言葉に耳を貸さず、少年はただにらみつけていました。そのなか召使が少年をそそのかしました。

「自信がないのでしょうか?ナルミ・ヴァンリッヒ。 彼女は条件を提示しております。彼女に話を聞いてほしければゲームに勝てばよいだけです。」

 そういう言葉を残すと召使は悪びれもなくむしろ満足な顔をして下がっていきました。少年は何かを決意した顔を決めると

「わかった。じゃあマヒロ。俺に負けたら俺の言うことを聞いてくれ」

 少年は少女を救うため、彼女に勝つ決意をしました。勝負をすると聞いた瞬間少女は再び笑みをみせると

「やっとナルミと戦えるのね。本気で来てね、じゃないと怒るから」

そう言って召使に勝負の準備をさせました。少年は頭をふると、

「そうだね。やるからには本気でやるよ。じゃないとマヒロに失礼だ。」

そう言い勝負の椅子に座りました。

 机の用意をした召使は

「女王様、ゲームの内容は何にいたしましょうか。」

とゲームの内容を問いました。

「そうね、チェスとかでも面白いけどここはポーカーで勝負としましょうか」

そう言い準備をさせました。

 少年は嬉しいような悲しいような顔をしながら昔を懐かしむ声で

「昔から、俺たちの勝負はこれで決めてきたもんな」

と言いました。

 少女も嬉しそうな顔をしながら

「ええ、でもこれはいつものポーカーじゃないよ。カードには数字は書かれていないの。書かれているのはマークだけ。書いてあるのは太陽と月と人工衛星の」

 ルール説明が終わると少年は

「なるほど、面白いゲームだな。マヒロとの戦績は勝ちも負けもだったよな。じゃあこれで決着としようぜ。俺とマヒロとの勝負にも」

と言いました。少女も笑うと

「いいよ」

といい高らかに宣言をしました。

「さぁ、ゲームを始めよう」


すると少年も笑って

「ああ、ゲームを始めようか」

と言い配られたカードを手に取りました。

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