第38話 勇者?

「とりあえず、これで登ってこれなくなったかな~。」


ミルグリアが地下へと続くダンジョンを見下ろしながら言う。


「ァァァァァァ。」


「なんか声が聞こえますね……。」


模造品の理性はいずれ取り戻される。

倒さない限り、王都はいずれ滅びるだろう。


「……どうにか倒さないとね~。」


「でも、勇者でも倒せなかったんでしょー?倒せるのー?」


「……難しいかな~。」


(これで倒せるかと思ったけど、甘かったみたいだな……。)


シュガーは頑張った。だが、模造品の方が強かったのだ。


「さっきいたおじいさんに倒してもらうのはー?」


バルドオに模造品を倒すほどの能力はなかった。


「……難しいかな~。」


そもそも勇者からして私を倒すことができなかったのだ。

模造品とはいえ倒せるものなど存在しないだろう。


「……。」


「……。」


「ァァァァァァ。」


地響きのような声が響き渡る。


(ここは俺が歌って、この声をかき消すか?)


そんなことをする必要はない。


「倒せたー?」


アレットが戻ってきた。

様子を見に来たらしい。


「魔王はどうしたのー?もしかして倒せたー?」


「倒せてないかな~。」


「よかったー!」


(アレットよ、なぜ喜ぶ……。)


悲観にくれた様子のシュガー。


「おーい、魔王はここだよー。」


アレットが叫ぶと同時に、誰かが転移してきた。


「待ったー?」


エメと、あとは……。


「こ、ここはどこなのじゃ!余をなぜこんなところに連れてきおった!貴様らは何者なんじゃ!」


「こ、国王陛下っ!」


ミルグリアが焦ったように言う。

……ダリア王。確かにこんな見た目だったような気がする。何百人ものダリア王を見てきたせいで、区別がつかなくなってきた。


「放せ、放すのじゃ!」

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