第36話 大言壮語

(そういえば、俺の頭が知識をくれるとき、何か法則性があったような……。あっ、あれだ。頭に何かぶつかった時だ!突然頭痛がしたかと思うと、視界が開けるんだ。思考がクリアになって、そこに知識を流し込まれている感じ。)


「ァァァァアアアアアアアッ!」


「這い上がってきてるー!」


模造品の叫び声がだんだんと近づいてくる。


(だが、頭をぶつけるのはどうも抵抗がある……。どうにか他の方法で……。)


「あの、ミルグリアさん。」


「どうかした~?」


臨戦態勢のミルグリアに向かって、のんきにシュガーが話しかける。


「頭が冴える薬ってありませんか?」


「は~い!」


ミルグリアが小瓶を投げる。


「よしっ、あっ!」


シュガーが手を滑らせる。


小瓶はそのままシュガーの頭部へと吸い込まれていき、


 ゴチッ


「痛いっ!」


ぶつかった。


だが、それによってシュガーの脳内に秘められていた知識があふれ出る。


(わかった……。わかったぞ!)


「打つ手がないかも~。あのさ~、ちょっと地上に行ってこれ渡してくれない~?」


ミルグリアがエメに封筒を渡す。


「これって……。」


「これを鎧を着た人に渡すと、あっという間にみんな逃げてくれる。予定になってるんだよね~。」


蝋と魔法によって封印された封筒。王都では勇者の血筋にしか開けない封筒。……まあ、今は誰にでも開けるだろうが、その中身が重要であることには変わりない。


「わかった!」


「あと、ここにいるみんなを避難させてあげて~。」


ミルグリアがシャンタルとアレットに向かって言う。


「いいけど、猫さんは……?」


「僕は残らないと~。」


「じゃあ、私も残る!」


「ありがとうね~。でも、危なくなったらすぐ逃げるんだよ~。」


「わかってる!その時は猫さんも一緒!」


「……そうだね~。」


シャンタルが残るらしい。


「俺も残ります!」


シュガーが高らかに宣言する。


「……お兄さんは、逃げた方がいいよー。」


「僕たちは頑張れば逃げられるけど、シュガー君は難しいんじゃないかな~。」


「いや、俺が残る必要があるんです!」


シュガーは引き下がらない。


「俺が、魔王を倒します!」


大言壮語を言った。

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