第34話 元に戻った!

(どうする、どうする?魔王って、ゲームとかに出てくるあれだよな、すごい強くて勇者が出なければ倒せない存在……。)


正確には、勇者にすら倒せない存在だな。


(ここから逃げることは出来なさそうだ……。)


そうだな。結界がある限りシュガーたちが魔法を使うことは不可能だ。そして、勇者の結界を破壊するような攻撃がなされたときは王都など一瞬で消滅するだろう。


(なんか魔王が動いてないな……もしかして、さっきの薬にあたって倒された?)


薬ごときで倒されるほど、魔王はやわではない。たとえ模造品だとしてもな。

あの薬品は、理性の歯止めを抑えるもの。

三千年前の当時、私は勇者に右角を落とされ怒り狂っていた。だが、私は理性によってそれを押しとどめていた。

三千年前の私の模造品。もう、あれには何の歯止めもかかっていない。


「うあ……あ、アア、ア!」


「なんで魔法が使えないの!」

「どうしよう!」


「ごぎゃっ、ごぎゃっ!」

「いす、ごぎゃっ!」


「我が計画が……!」


それぞれが思い思いに叫ぶ。


「……みゃあ。なんてね、いつまでも猫のすがたでなんていられないか。」


猫が喋った!

いや、こいつはミルグリアか。なぜ喋れているんだ?


「お~い。魔王さ~ん。話通じますか~?無理そうだね。」


いつの間にか、ミルグリアは猫の姿から元の着ぐるみ姿に戻っていた。

なぜ……。


「おい、貴様。なぜ元の姿に戻っている。」


謎の人物からの問いかけだ。


「あの変化薬、そもそも僕にあたってないんだよね~。」


「なんだと?」


「僕ってさ、結構薬持っているんだ~。だから自分の持っている変化薬をほんの少しだけ使ったんだよ~。ちょっとばかし効き目の弱い奴をね。」


「なぜ元に戻れたのかを聞いているのだ。」


変化薬は少量とはいえ、効果は絶大だ。変化薬を無効化する魔法を使えたとしても、王都内では使えないはず。


「変化解除薬がほらっ、ここにあるでしょ~?」


ミルグリアは小さな粒上のものを見せてきた。


「これっカプセルっていうんだ~。たまたま手に入れる機会があってね、この中に変化解除薬を入れてるの、普段からね~。で、今さっき口に入れていたのをこう、がぷって飲んだんだ~。」


ミルグリアは口を開け閉めして見せた。


「それにしても、変化薬って不思議だよね~。変化するものと変化しないものがあるんだから~。」


他のカプセルを触りながらミルグリアは言う。あれの中には変化薬が入っているのだろうか?


「おっと、こんなおしゃべりしている暇なんてないか~。」


ミルグリアは魔王の方へと歩き始めた。


「魔法は効かなくても、お薬は効くよね?」

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