第31話 地下水道
「あと少しで、行き止まりか……。」
謎の人物が立ち止まった。
「よしっ、あそこまで行ったらもう一度貴様らに掘ってもらうからぞ。」
「さっきみたいに掘った方が早いんじゃないでしょうか?」
「あそこは王都の地下だ。結界が張られていて魔法は使えん。」
シュガーたちは穴を掘る。
「みゃあ~。」
ミルグリアはのんきそうにその様子を眺めている。
「ごぎゃっ?」
「何かあったのか?」
シュガーがゴブリンの声に気が付いて駆け寄る。
「ごぎゅっ、ごぎゅっ。」
ゴブリンは掘っている部分を指さす。
「これは、レンガ?」
もうこれ以上は掘れなさそうだ。
「あの、レンガがあってこれ以上は掘れなさそうです。」
「本当か!」
謎の人物がレンガによって掘れなくなった場所まで来た。
「よし、下がってろ。」
謎の人物がレンガに向かって突進する。
ドンッ
レンガが崩れ去った。
(強い……。)
魔法が使えない以上、これは謎の人物の体の硬さと筋力のおかげなのだろう。
「ここが地下水道か……。」
謎の人物を先頭に、シュガーたちが地下水道に入る。
「お待ちしておりました。」
謎の老人がそこにはいた。
「待たせたな。」
謎の人物があいさつをする。
(ん?こいつ、見たことあるぞ……。)
おやおや、これはこれは、まさか
「魔法を打ってきたやつだ……。」
ポポ協会のトップ、バルドオだ。
「みゃあ~。」
ミルグリアがバルドオを見て鳴き声を上げる。
「うむ?こやつ、どこかで見たことがあるような……。」
バルドオがシュガーを見てつぶやく。この二人は戦ったこともある。
「……まさかそんなわけないな。こちらへ……。」
バルドオが地下通路を案内する。
「なんかここ、魚住んでない?」
「ほんとだー。」
住んでいる。なぜ魚が住んでいるのか、それはこの地下水道が現在では使われていないからだ。三千年前に勇者がもたらした科学、それと魔法の融合によって作られた地下水道。できた当初はもの珍しさから利用する人も多かったという。だが、そもそも川の河口にある王都は水不足とは無縁だったため、飽きられると利用者は減っていった。必要がないのに作られた無用の長物、それが地下水道だ。それでも数十年は細々と維持されていたが、王都大氾濫が起こった際に放棄された。その際に流入した魚は現在でも地下水道全域で生息している。また、巨大な地下水道は王都で起こる様々な陰謀の舞台になっている。シュガーたちによって開けられた穴のほかにも、様々な出入口が地下通路にはあるという。地下水道は勇者の負の遺産の一つだ。
「この地下水道は勇者様のもたらした力によって作り出されたものだ。今でも洪水から王都を守るために使われている。」
……。
「私の前で勇者の話をするな。」
謎の人物の言葉だ。
「はは、これは失礼いたしました。ですが、私たちは新たな勇者を生み出すため、ともに行動をしているのです。ゆめゆめお忘れなきよう……。」
「戯言を……。それは貴様らが勝手に言っているだけにすぎん。」
「ははは、これはこれは。」
「……黙れ。さっさと案内しろ。」
それっきり二人は黙った。
(気まずいなあ。ここで俺が歌ったらどうなるんだろう。)
シュガーは相変わらずだ。
「見えてまいりました。」
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