第27話 またしても地上へ

謎の人物が瞬きをすると、宙で火が上がった。


「せいっ!」


謎の人物が火を切ると、剣が火の粉に包まれた。


「ゆくぞ、でやあっ!」


狭い通路を駆け抜ける謎の人物。戦略はないのだろうか?それとも油断しているのか?


「ふぅ~、はぁ~、ほぉ~。」


ミルグリアによる間抜けなつぶやきと同時に、辺りに轟音が鳴り響く。


(うるさっ!)


「ごぎゃあっ!」


「なにっ!」

「うるさいよー!」

「耳がー!」


ダンジョンコアたちも目覚めたようだ。


「くっ、音で目くらましとは……。だが、この程度で私に勝てるとは思うなよ。」


轟音によって、足を止めていた謎の人物が、再び前進始める。


「はやく来なよ~。ふぅ~。」


再び轟音が響き渡る。


(うるせぇっ!耳が、耳がいてぇ!)


「……。」


無言で剣を振りかぶる謎の人物。


「対策されちゃったか~。」


風に乗ってよけるミルグリア。


「そんなに動き回って、私の剣がそんなに怖いか?」


謎の人物が挑発する。


「怖いよ~。」


ミルグリアは笑いながらいう。


「おのれっ!」


謎の人物は剣を振り回すが、ミルグリアには当たらない。


「ひぃっ!」


剣がシュガーのすぐそばを過ぎ去った。


(もう少し遠くで戦ってくれっ!)


「猫さん、私たちも加勢するー!」


「他のみんなとどっかに逃げといて~。」


ミルグリアはダンジョンコアたちによる加勢の申し出を断った。


「私ごとき、貴様一人で十分だとでもいうつもりか?」


謎の人物の怒りによって、ダンジョンの内部がさらに熱くなる。


(まずいな……。このままでは俺の計画が遂行できない。)


シュガーによる計画とは名ばかりの妄想。その実現の可能性が途絶えた。


「お兄さん、アレットとシャンタルはもう行ったよ!」


辺りを見ると、周囲にいるのはすでにミルグリアと謎の人物、エメ、そしてシュガーだけだった。


「あぁ……。俺らも転移しよう。」


シュガーは計画を破棄し、逃走を選んだ。


「逃がさん!」


謎の人物が突然シュガーの側に転移する。そして逃げようとしたシュガーの首根っこをつかんだ。


「ぐぇっ。」


「お兄さん!」


「シュガー君!」


「またお邪魔させてもらう。」


謎の人物は別れの挨拶をすると、そのまま転移した。


「は、放してください!」


シュガーが叫ぶ。


「……。」


謎の人物がぞんざいにシュガーを投げ捨てる。


「いたっ!」


(草の感触だ。また転移したのか……。)


同じ展開の繰り返しに、シュガーは多少飽き飽きしているようだ。

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