第24話 眠い
「ひどい目にあった……。」
「ごぎゃ……。」
「これからは仲良くね~。」
着ぐるみ男による風のショーが収まり、ダンジョンに静けさが戻った。
「眠い……。」
「お休み……。」
ダンジョンコアたちは眠気に耐えられず、寝てしまったようだ。
「さて~、え~と、名前なんだっけ~?サットゥ?」
突然着ぐるみ男が男の名前を聞く。
(そういえば、言ってなかったな。名前を言うのか……。なんか本名を言うのは抵抗があるな。よし。)
「シュガーと申します。」
サトウ改めシュガー。男は自らそう名乗った。
「……よろしく~。シュガー君。あっ、人の名前を聞くときは、まず自分からだったね~。僕の名前はミルグリアだよ~。」
(知ってるわ。)
「いい名前ですね!」
自らの感情を隠し、媚びを売る男。
「そんなに気を使わなくていいよ~。僕も気を使ってないし~。」
(くっ、少しは気を使え。)
「まあ、君は多分そのうち自分を隠し通せなくなるよ~。人間ずっと演技してたら疲れちゃうでしょ~?」
「いえ、これは本心です!」
白々しい演技を続ける男、ではなくシュガー……でもなくサトウ。
「そう~?まあいいか~。それで、椅子はどうだった~?」
ミルグリアは、椅子に座った時にシュガーに変化があったか聞いた。
あっ、また間違えた。いや、シュガーでいいか。
(椅子に座ったときか……。俺の頭から新たな知識が得られたことだけはわかっている。どんな知識だったけ……。さっきの衝撃で忘れてしまった。)
「いい座り心地でしたよ。私のためだけに作られたのかと思いましたね。」
シュガーは自分が何を聞かれたのか理解していたが、わざと見当違いの回答をした。
「多分そうだと思うよ~。だってシュガー君、ダンジョンマスターでしょ~?」
ミルグリアはその見当違いの回答で、十分に満足したようだ。
(そうなのか?正直ダンジョンマスターらしいことをまだした気がしない。実は異世界から召喚された一般人だったりするんじゃないか?)
正真正銘のダンジョンマスターである。
「そう、ですかね?」
「きっとそうだよ~。」
(まあ、そうだよな。じゃないと召喚された理由がないもんな……。)
「それに、ダンジョンマスターの生態ってわかってないことが多くてね~。ぜひ君たちのことは研究させてほしいよ~。」
ミルグリアにとってはシュガーの行動と反応、そのすべてが知的好奇心を刺激して面白いのだろう。
(えぇ、嫌だなぁ……。)
「はい、喜んで!」
「今はそうじゃなくても、いつかシュガー君が心の底から研究されたいって思ってくれるように僕も努力するから、よろしくね~。」
(俺の心、やっぱり読まれてる?)
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