第18話 椅子

「いすー!」


「大丈夫かなー?」


男は同じフレーズを何度も繰り返している。


「とりあえず、計画通りにがんばろー!」

「おー!」


「じゃあ、ゴブリンの村探してくるね~。」

「ごぎゃっ!」


着ぐるみ男はゴブリンを抱えると、空へ飛びあがった。


「いってらっしゃーい!」


ダンジョンコアたちは動かない。


「早く帰ってこないかなー。」

「そんなにすぐには終わらないよ。」

「転移のためにしっかり休まないと。」


先ほどの話し合いによって策定されたのは、まずゴブリンの村の位置を確認し、その位置情報を着ぐるみ男がダンジョンコアに伝える。そして椅子が置いてあるであろう場所に転移し、一気に奪還する。


「椅子が返ってくれば、元に戻るかな?」


「いすー!い、いす……いすっ!」


「もしかして、回復草にあたったとかじゃないのー?」

「もしそうだったら、どうしよう……。」

「とりあえずいまは、さっきの計画通りに頑張ればいいよー。もしダメだったらすぐに新しい計画に移ればいいだけだもん。」


「じゃあさ、新しい計画を今立てちゃおうよー。」

「いいと思うー!」

「うーん、どんなのがあるかな?」


「回復草にあたった時の対処法を調べるとか?」

「でも、回復草のこと全然知らないよー。」

「回復草の反対のものを使えばいいんじゃないかなー?」


「回復草の反対?」

「毒草とか?」

「そうそれ!」


「よしっ、探そー!」

「でも、毒草のこともよくわかんない……。」

「やっぱ、戻ってくるまで待つ?」


「ほかの計画を考えよー!」

「回復草の反対……。」

「一度回復草のことは忘れようよー。」


「だったら、椅子の代わりを探すとかー?」

「椅子の代わり……。」

「椅子ってあの部屋にあったやつだよね?」


「他にも椅子ってあるのかなー?」

「あの部屋に戻ってみようよー。」

「確かに、なんかのヒントがあるかもー!」


ダンジョンコアたちが部屋に向かう。

残されたのは、


「いすー!え、エ、エ、いすっ!」


「ごぎゃっ……。」


男とゴブリンであった。ほかのゴブリンたちが着ぐるみ男と村へ向かったため、

しばらく気まずい時間を過ごすことになる。


「ごぎゃ……。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る