第17話 回復草

「ねぇ、おなか減ったー。」


(俺も空腹だ。何か食事を。)


男があたりを見渡した。食べられそうなものは見当たらない


「これ食べる~?」


「食べるー!」

「私もー!」

「やったー!」


「ありがたく頂戴します!」


着ぐるみ男が食べ物を渡す。


(なんだこれ……そこらへんに生えてる雑草か?)


雑草、男にはそう見えるだろう。


「まずいー!」

「なにこれ……」

「これが……食べ物。」


(まずいのか。食べたくない。)


「食べないの~?」


「食べます!」


男は息を止める。そして、頭の中で食べ物のことを思い浮かべた。


(サーモン、カレー、寿司、ジュース。そう、これはジュース。)


そして、一気にほおばる。


「まっず!」


「まぁ、回復草だからね~。美味しくはないよ~。」


「……なんか元気出た。」


「ほんとだー!」

「やったー!」


男の頭が猛烈に回転を始める。


「わ、わかったぞ!」


セレンディピティ、予期せぬ閃き。


「俺は、俺は、ダンジョンマスターだったんだ!」


「知ってるよ~。」


「知ってるー。」

「突然どうしたの?」


「あれだ、そう、あの部屋に行けば……」


男が動き出す。


「へぇ~?」


(ここだ。座らなければ。)


男は一瞬空気椅子の状態になり、そのまま転げる。


「痛い!」


「ここに、椅子が、ない?なんでだ?」


「椅子?なんのことー?」

「うーん、置いてあったような気もするけどー。」


「ここは、ゴブリンに聞いてみるのが一番かな~。」


「お~い、うぎょっ?」


「うぎゃっ、うぎゃっ!」


「だってさ~。」


「なんて言ってるのかわかんないよ……」

「翻訳してー。」


「あれだね~。村においてあるって~。」


「村?とってきてもらおー!」


「それは無理っぽいよ~。」


「なぜ?」


「今、村に入れないんだってー。」


「ごぎゃっ!ごぎゃっ!」


「村の頭領が変わってから、自分たちの仲間は入れなくなったとか~。」


それから着ぐるみ男とダンジョンコア、ゴブリンたちの話し合いは数時間も続いた。

男はその間……


「いすー!いすー!ないぞー!うっ、俺は、俺は、え、え、エ。」


錯乱状態にあった。

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