第11話 煉瓦に囲まれて

「王国・・・騎士団?」


王国騎士団。ダリア国王の直接の指揮下にあり、王都の治安維持などを担っているが、厳密な任務はない。王国の便利屋といったところ。


「貴様らの取引相手はすべて調査済みだ。来てもらおうか。」


「いやいや、何のことか全くわからないんですが。」


「あくまでしらを切るつもりか。まあいい。令状は既にあるからな。」


(一体何なんだ?もしかして、さっきの老人か?)


「ひ、人違いですよ。たぶんそれは、あっちにいるあの人のことですよ。」


男が箱の方を指さす。

ダンジョンコアたちはまたしても、どこかへ消え去っていた。


「なんだ?おい、見てこい。」

「はっ。」


長い楯を持った騎士団員の一人が、男を警戒しながらゆっくりと箱の方へ向かう。


「魔法は使えないだろうが、念のためな。もし、あの箱に何か仕掛けていたら、ただじゃすまないと思え。」


「そもそも私は巻き込まれただけですから。」


男は冷や汗を流しながら、必死で笑みを作っている。


(なんでこうもたて続けて起こるのか・・・)


突然異世界に転移して魔物に襲われ、逃げた先で魔法を撃たれ、逮捕されかかっている。男はなぜこんな目にあっているのか、自分の運命を嘆いた。


(まあ、さっきも何とかなったし、今回も何とかなるだろ。)


変な自信がついてしまったようだ。


「隊長!この方は、もしや・・・」


「なっ!王都港湾総督ではないか!」


王都港湾総督、ダリア王国に数多く存在する名誉職の一つである。


「突然この人に魔法を撃たれて、私は何にも知らないんです。」


男は弁解のチャンスが来たとばかりにまくしたてる。


「貴様・・・役職持ちの、それも高位貴族を誘拐するとは・・・大法廷まで回す必要がありそうだな。」


大法廷、ダリア王国の司法機関の頂点に位置する。


「総督、大丈夫ですか?」


「う、鮭フレーク・・・」


「鮭フレーク?お気を確かに、総督!」


老人は再び意識を失う。


「・・・連れていけ。」

「はっ。」


「おぉ~っと、その老人も連れていく必要があるかなぁ~。」


珍妙な格好をした男が現れた。猫の着ぐるみ姿で、巨大な猫じゃらしを持っている。実に怪しい。


「ミルグリア様、なぜここに。」


「その人を捕まえるためだよ~。」


怪しい人物が老人を指さす。


「この人、あれなんだよね~。ポポ協会の、トップってやつ?君たちが出向いた後に、わかったんだよね~。」


「ポポ協会の!?本当ですか?」


「本当だよ~。で、お話が漏れないようにこの大法廷裁判官のミルグリアんが直々に出向いたってわけなのよ~。君たちも、この話は他言無用だよ?」


「「はっ。」」


「それで、こいつはだれ~?」


こっそりと逃げ出そうとしていた男。


「えへへ、何も見てないんで失礼します!」


「捕まえろ。」

「はっ。」

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