第10話 缶詰は硬い
「なんだってんだ・・・」
ダンジョンコアたちはいつのまにかいなくなっていた。
「おい、どこにいる。さっさと出てこい」
男は魔法を撃たれた後、倉庫に逃げ込んでいた。
ロウソクををつけて、老人が倉庫内に入り込む。
(出ていくわけないだろ!どうする、この状況。俺の頭よ、頼む、この状況を抜け出す何かをくれ!)
泣きそうな顔で、男は自分の頭をなでる。
(そういえば、あいつらはどうしたんだ?)
男はダンジョンコアのことを思い出したようだ。
(まあ、巻き込まなくてよかった。)
確かに、そうである。魔法が使えないダンジョンコアは非常に無力だ。
(いや、よく考えると魔法を使えるんし、てか俺より強いし、見た目は子どもでも中身はダンジョンコアだし、むしろ巻き込んだ方がよかった・・・)
「あとで、見張りの野郎をとっちめてやらねえとな。」
男のすぐそばまで、老人が来た。
(一か八か、これを投げるか。)
老人は自分の絶対的な優位を疑っていなかった。取引を邪魔しに来た、もしくは、迷い込んできた哀れな子ネズミを退治する。その程度の認識だった。
だから油断した。
「俺の缶詰受け取りやがれっ!」
ろうそくの炎に反射して、缶詰メーカーの名前がきらめいた。
「トミンクの鮭フレーク・・・」
窮鼠猫を噛む。老人の意識はそこで失われた。
(勝ったのか・・・?)
「お兄さん、グッジョブ!」
「さすがだね!」
「見直したー!」
「お前ら、そんなところにいたのか・・・」
男から少し離れたところで、ダンジョンコアたちは隠れていたようだ。
「せめて加勢してくれ・・・」
「魔法使えないから無理ー。」
男は何か言いたげだったが、老人がまだ倒れていることを鑑みて、口を閉ざすことにした。
「それにしても、この人どうする?」
「どうするかな・・・」
「箱の中に入れるってのはどう?」
「賛成!」
「あっちにあるー!」
どうやら、ちょうどいい大きさの箱があったようだ。
「なんか、俺らのほうが悪いことしてるような気がしてくる。」
「でも、じゃないと起きた時にやられちゃうよ?」
「まあ、そうだよな。」
それにしても、王都の結界で魔法が使えるとは・・・
やはり、あれなのだろう。落ちぶれたものだ。
「なんか足音聞こえない?」
「ん?そうか?」
「私にも聞こえるよー。」
「足音、近づいてるね。」
ガンッドシッ
「王国騎士団だ!貴様ら一歩も動くな!」
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